オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

宇宙戦艦ヤマト、またしても浮上す

 4月から、「宇宙戦艦ヤマト2199」なる新作アニメがスタートした。

 果たして、初代から数えて何作目だろうか。敵の攻撃により、どれだけ破壊されても1週間経てば元通りに修復されてしまうと、以前から厳しい指摘を受けているキャラクターだけに、何度作り直されても一向に構わないのかもしれない。

 それにしても、ストーリーの基本部分は大きく変わらない、大凡の流れが分かっているにも関わらず、見始めるとグイグイと内容に引き込まれる。面白い。よく出来たお話だと思う。

 さらには、今風の綺麗な絵柄になっているし、現代的にCGも駆使されている。おねえさんは、皆今風に可愛く艶っぽい。

 リニューアルとはいえ「上出来だ」と昔からのアニメフアンであるおっさんの私は思う。

 この間、「サイボーグ009」もリニューアルされていた。今、若いクリエーターや作家達がクラシック作品を、次々と現代風の表現で作り直している。

 中には、厳しい批判をする人もいるだろう。しかし、私はこの流れを歓迎している方だ。色んな感性で昔の作品を見てみたい、その好奇心が勝っている。

 ハリウッドも同じ傾向にある。

 業界の人達の発想が貧困になったというよりも、昔の名作を再評価したいというムーブメントなのだと思いたい。それは、それで面白いことだと思うから・・・。

 SMAPの一員と女優が主演した新作「日本沈没」は酷い出来だった。小松左京の不世出の名作だけに残念だった。でも、やらないよりは良いと思っている。

 出来れば、才能ある方に、再度リメイクしてもらいたい。

 私が期待するのは、もし、大国(日本でなくともいい)が沈没したら現代の政治情勢がどう動くか、という仮説、シミュレーションだ。国連が、USAが、EUがどう考え行動するのか、その仮想設定が見てみたい。

 小松氏の原作では、最後の最後に日本に救いの手を差し出したのは中国、"CHINA"だ。

 

 初代宇宙戦艦ヤマトの制作には、松本零士氏が参画している。このインパクトは極めて大きかった。

 ある雑誌で見たことがあるが、西崎義展氏が当初イメージしていたヤマトはヤカンみたいな形をしていた。見事にブサイクなデザインだった。

 それを途中から松本氏がメンバーに参加し、今や有名な誰でも知っている、あの宇宙船+戦艦大和の形にデフォルメしたのだ。

 ミリタリーファンである私が見ても、あれほどカッコ良く戦艦大和をリデザインすることは、もはや誰にもできないと思ってしまうほどの出来だ。まさに最高のデザインだと言える。

 松本氏と西崎氏は、宇宙戦艦ヤマトを巡る著作権で係争したが、結果は西崎氏の勝訴だった。

 私は、あの判決は間違っていると思う。

 登場人物はもとより、ヤマトの艦橋風景、兵器類、なにより放射能除去装置(コスモ・クリーナーD)のデザインは松本氏独自のものだ。

 あのデザインでなければ、やはりヤマトではない。

 反射衛星砲もそうでしょ?

 他のどの作家も、あの大砲のデザインは書けないと思う。

 また、ドメル艦隊がヤマトとの七色星団決戦に出撃させた4隻の空母。あれは恐らく、ミッドウェイ海戦で沈んだ「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」のオマージュだ。

 3段飛行甲板は「赤城」のデフォルメだ。

 恐らく戦闘空母は「飛龍」だと思う。イメージがぴったりだもの。

 間違いなく「宇宙戦艦ヤマト」は松本零士ワールドだった。

 

 中心人物である古代進の兄:古代守が乗艦していた護衛艦は「ゆきかぜ」という名前だ。

 「ゆきかぜ」という艦は実在した。「雪風」と書く。旧日本海軍駆逐艦だ。

 松本氏がストーリーのキーにもなる護衛艦、古代守が乗艦する船に「雪風」を選んだ(恐らく松本氏の発想だと思う)理由は何となく理解できる。

 「雪風」は、戦艦大和が撃沈された場面に立ち会っている。大和の生存者を日本に連れ帰っているのだ。「雪風」は武運の名鑑として、その名が連合艦隊の歴史に刻まれている。

 13回もの海戦・作戦に参加したが、大きな損傷を受けたことが一度も無い。

 彼にとっての最後の作戦が菊水作戦。大和の沖縄特攻だ。

 誰が見ても”必死”の大和の沖縄特攻に同行し、そこでも生き残り、終戦を迎えている。戦時中の乗務員の戦死者は1名のみ。

 「雪風」は、戦後、復員輸送艦として縦横無尽の活躍を継続し、最終的に中国(CHINA)に引き渡されたそうだ。中国では「丹陽」という名で呼ばれていたらしい。

 彼は、「雪風」は日本には帰ってこなかった。

 おそらく彼の地で廃艦になったのだと思う。

 祖国にあれほど貢献してくれた武勇艦であるにもかかわらず、寂しい最期であったのかも知れない。

 願わくば中国の人達にも愛されていた、と信じたい・・・

 松本氏は、人類の未来を託す宇宙戦艦ヤマトの艦長を、最期まで護り通そうと獅子奮迅の活躍をする護衛艦の名前にこそ「雪風」が相応しいと考えたのではないだろうか。

 そう言えば、大和型戦艦を改装した空母信濃」は、終戦も近い頃、和歌山沖で潜水艦の攻撃を受け沈没している。「雪風」は「信濃」の最期さえも護衛艦として見守っている。

 

 ヤマトと大和と雪風。よく考えられた設定だと思う。

 そんなことを考えながら「宇宙戦艦ヤマト2199」を見ている。