オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

ジョブズの夢の続き 〜 Mac Proへ 〜

 1984年、そのPCは私達の前に現れた。

 それまで、PCで文書作成をするためには、画面上のコマンドプロンプトから、例えば ”jxw” と入力しエンターキーを押す儀式が必要だった。あるいは在庫管理の為の「表計算」をする場合は ”123”など、少なくとも、やりたい仕事を実現してくれるソフトのコマンド名称を暗記しておくことは”必須”だった。

 また、アプリケーションソフトの操作の殆どは、”コマンド”を入力しなくてはならない。例えば、表計算ソフトでファイル保存をする場合は、”/W zaikokanri”など。

 そのPCは違った。

 本体に、ケーブルで小さな四角い箱が接続されていた(マウスと呼ばれた)。

 その箱は、先端にこれまた四角い、それも大きく平べったいボタンが一つだけ付いていた。人は、これまでに見た事もないその不思議な感じの箱を動かしてみた。そうすると、画面上にあった矢印が右左に動く。あるいは、時々、矢印は砂時計の絵にもなったりする。

 ある場所までその矢印が動くと、突如、上からメニューがヌッと出てくる。

 人は、驚いて思わず身を引く。

 しかし、よく見てみるとメニューには何か書いてある。分からずに適当にボタンを押してみたら、画面が替わりメモ用紙のようなものになった・・・

 「何じゃ!こりゃ〜!」(松田優作風に)

 このPCの画面と操作方法は、PC−9801のそれとも、X−68000のそれともFM−16のそれとも全く違った。何と言っても、画面全体がグラフィックスだらけだ。キャラクタ・ディスプレイのPCとの違いは一目瞭然だ。これまでと、全く違うPCであることは誰が見ても歴然としていた。

 このPCは驚く事に、分厚いマニュアルを読まなくても、四角いボタン付きの箱をいじっていると何となく思う通りに、自分がやりたい事が出来てしまうという特徴があった。

 PCの操作方法が、説明書を読まなくても分かる!

 何て素敵な・・・

 これまで考えた事も無いPCが現れた!

 

 これが、Macintoshだ。

 一部の人々は驚愕し、驚喜した。

 ”コンピューテングが変わる”

 このマシンを見た人達は、そう確信した。

 この変化は、とてつもなく大きなものだった。例えようがないのだが、ガラケースマホに変わった時の操作感の違いの10倍くらいか・・・?ともかく、限りなく、果てなくエポックメイキングな発明であり出来事であった。

 しかし、多くの人はそのようなPCが出現した事に気が付かなかった。それは、当時のMacのシェアを見れば分かる(ほんの数%)。大多数のコンシューマーはこの革命的なPCの出現を知らなかった(あるいは知ろうともしなかった)。PCがまだコモデティ化されていない時代だった。

 Windowsは、まだこの世に存在しない。

 MS-DOSの時代だ。

 Windows3.1が現れるのは、これから8年後1992年だ。しかし、Macの後発でありながら、その機能・操作性はさらに遅れていた・・・。

 

 時は流れる。

 21世紀。PC、タブレットスマホと人々が日常的に使う情報端末の選択肢は広がった。マイクロソフトのOSもWindowsXP/7になるころから市場・ユーザーから確固たる評価を得るようになっていた。

 Macが出現して約30年・・・

 アラン・ケイが夢見たダイナブックは今、現実のものとなりつつある。人々は、各自の部屋にではなく、ポケットや鞄の中に ”それ” を持っている。

 音楽が聴ける、インターネットにアクセスできる、電話ができる、世界中の人達とコミュニケートできる・・・

 そんな情報端末を私達は現実として有している。

 それを提供したのは、Appleだ。

 スティーブ・ジョブズだ。

 コンピューターは私達の生活を変える。今よりも恐らくもっと楽しいものに。ジョブズもそれを夢見ていた。彼が天国に引っ越しても、私達の夢はまだ続いている。

 彼の後継者たちがいるからだ。

 ジョブズは確かに不世出の天才だ。

 しかし、彼を支えたAppleメンバがいなければ、その夢の多くは具現化していなかったと思う。

 そう、”彼ら”の冒険は、まだ続いている・・・

 6月11日、WWDC2013にてAppleから新たな提案があった。

 Mac Proを見ましたか?