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オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

夢とロマンをこめた”ムダ”

 ウルトラマンのNGシーンを治めたフィルムが発見されたそうだ。

 その一部は、ネットで視聴できた。私も拝見したが、これは笑えた。

 ケロニアがつまづいたり、ジャミラが燃えたり。

 ドジを踏むウルトラマンまで見る事が出来る。とても面白い。

 この貴重なフィルムは1時間程度のものらしいが、是非とも何らかの形で公開してもらいたい。

 DVD化するのも良いと思う。マニアでなくとも、映画ファンの一部の方々は喜んで購入するのではないだろうか。特撮映画史に残る貴重な資料として・・・。

 

 円谷プロは一度倒産している。

 その時の新聞記事の一部をうっすらと記憶しているが、破産管財人は円谷プロを「コストを度外視した放漫経営を行っていた」という趣旨の報告をしていたと思う。

 映像に拘り、わざわざミニチュアで市街地を作った上、それを怪獣に壊させるなどし、莫大なコストをかけて番組制作を続けていた・・・、との事。

 「・・・?」

 当たり前じゃん。それ、やらないとウルトラマンじゃないでしょ?ミニチュア作って壊さず、怪獣は何を壊すのよ?

 円谷映画・・・、日本の特撮映画は、アニメーションではなく、実写に拘って来た。怪獣であれば「着ぐるみ」、町並みは石膏で作った「ミニチュア」、飛行機・艦船は巨大な模型を用いていた。

 メイキング映像を見れば分かるが、その規模、精巧さにはたまげる。

 円谷英二の古典的名作である「ハワイ・マレー沖海戦」や「太平洋の嵐」に出てくる航空母艦は、大人が甲板に乗れる程の大きさがある。

 真珠湾のミニチュアは、数十メートル四方もある巨大なものだ。そこに、精緻な建物・施設を作り、擬装を凝らしていく。それに、惜しみも無く手間ひまとお金をかけた。

 そこには、日本のモノ作りの一端を見る事ができる。

 映像制作者達の拘り、取り巻くスタッフ達のクラフトマンシップを見る事が出来る。

 それは、いかにも日本的な造形美が込められた素晴らしいモノだった。

 これをコストを度外視した「ムダ」と言うのであれば、それは経営論としては正しいのかも知れない。

 しかし、この「ムダ」の中には”夢”が込められていた。

 とっても素敵でわくわくするものだった。

 この高揚感は絶対的なものであり、子供達は皆、興奮した。感激した。凄まじいインパクトだった。

 それを見て育った子供達は、今は大人になっている。

 私のような単なるおっさん化したものも多いが、映画・制作の世界に飛び込み、世界と期する映像を作り出している方々もいる。

 その方々の中の多くは「ウルトラマン/ゴジラを見て驚いた。映画作りのきっかけとなった」旨のことを言っている。

 あの方々は円谷の申し子だ。

 現在、日本が世界に発信している映像、あるいはアートの多くのルーツには「TU・BU・RA・YA」のDNAが組み込まれている、と表現すると言い過ぎであろうか。

 私にとっては、そう言いたくなる程尊い記憶だ。

 決して「ムダ」などでは無かった、と信じたい。「ムダ」と思われるところから、信じられないくらい尊い価値観が生まれていると思いたい。

 

 いいものを作るにはお金がかかる。

 しかし、作ろうとしている「ソレ」が価値あるものなのか、はたまた大衆に受け入れられるものなのか、「売れる」モノであるのか、最初からは分からない事が多い。

 だから「投資」は難しい。

 経営の事はよくわからない。でも、どんなお仕事にも「夢」は必要だろう・・・

 

 バブルの頃、何とNHKが円谷プロを舞台にドラマを作った事がある。

 タイトルは「私が愛したウルトラセブン

 エピソードは、

「夢で逢った人々」

「夢見る力」

 だった・・・