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オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

「危機管理能力」のことを言っている

「宇宙はシビアな環境なので、危機管理がとても大切です。全てのリスクを無くすのは無理なので、トラブルに応じた方針を事前に決めます」

「機械の故障でも即時修理の必要性など優先順位をつけて対応します」

スペースシャトルは70分の1の確率で事故が発生します。JAXAの飛行士になり、死を真摯に考えました。私にとって宇宙飛行士とは、そのリスクを引き受けるに値する役割との結論にたどり着きました」

「リスクは生活全てに存在するでしょう。危険があると怖くなりますが、怖さの正体を見極め、リスクを最小限に抑える事が大切だと思います」

 

 宇宙飛行士:野口聡一さんの言葉だ。

 この言葉には、リスクマネジメント、危機管理の要諦、プロフェッショナルとしての責任感が集約されていると思う。

 万が一、スペースシャトルが事故にあっても恐縮ながら生命の危機に対面するのは、宇宙飛行士7名だけだ。さしあたって、それ以外の人に被害が及ぶ事はない。

 また、国際宇宙ステーションが危機に対峙すれば、最悪の場合、放棄すれば良い。危機の対象となるスタッフはISS滞在者のみであり、やはり被害は限定的だ。 

  さて、「宇宙開発」がミッションである彼らとその支援スタッフ(JAXANASA)が、このような冷静・沈着なリスクマネジメントのもと、ミッションを遂行しているのに、一方で「原発」にかかわる組織・スタッフが、斯様に心細く見えるのは何故だろうか・・・

 

 ISSよりも、施設の放棄が難しく、有事の際の影響の及ぶ範囲が桁違いに広範で長期間に及ぶであろう原子力プラントについて、宇宙飛行士並みの熟練・熟達度が関係者に見られないのは何故であろうか?

 「原発なしでは、日本経済は破滅する」

 刺激的な表現が飛び交っている。

 「原発の即時廃止など不可能」

 「絵空事。楽天家の言うことだ」

 確かに、ロジックで考えるとそうかもしれない。

 では、聞き返したいが、有事の際、ISSほど簡単に放棄出来ないあの巨大プラントを稼働・保守している組織・関係者は、宇宙飛行士ほどのプロフェッショナビリティと危機管理能力を有しているのだろうか?

 私は強い疑念を持っている。

 本当にこのままで良いのか?

 震災と原発事故から3年が経過しようとしているのに、破壊されたプラントの現状は、ご存知の通りだ。未だ、汚染水の流出さえ抑えきれてはいない。

 廃炉など、まだまだ先で気の遠くなるような将来の話だ。

 この私たちの(経済成長という)夢を乗せたプラントは、今も私たちの制御下には無い。

 原発の維持・推進派は、この自由気ままに核分裂を継続する魔物と将来にわたり、どう付き合っていく覚悟であるのか。

 是非、そのストーリーを聞かせてほしい。

 我が国の「原子力プラントの管理技術」は、3年前の震災以降、どのように進化・発展できたのかを。

 「現実を見よ」と推進派が言うのであれば、その人達は、純粋な技術論と管理技術で「原発」を完全制御する”叡智と未来”を私たちに見せて欲しい。

 もう一度、原発事故が起きた際、どのように組織と現地スタッフが行動し、被害延伸を抑止できるのかを・・・

 私は、人が事故に事例に学び「成長と進化」をしない限り、あのような中途半端な制御技術・破壊的エネルギーに頼るべきではないと思う。

 経済評論家や政治家は、根拠の無い「楽観」と「経済論理」に引きずられ過ぎだと感じている。

 関係者の宇宙飛行士の足下にも及ばない浅い知見と経験、低実務能力をもってして、一体何を根拠に「プラントは大丈夫だ」と言えるのか。

 私が見たいのは「危機管理能力」だ。