オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

ガリレオの遺産

 2階の窓から、紙切れ1枚とパチンコ玉1個を同時に落としたら、どちらが先に地面に到達するだろうか?

 殆どの方は「パチンコ玉」と回答し、そしてそれは大凡のシチュエーションにおいて正しい。

 では、その理由を説明できるだろうか?

 回答の内容は種々考えられるが、「紙切れよりも、パチンコ玉の方が重いから」というものは考えられないだろうか。

 これは、生活習慣の延長線の思考において、全くおかしな発想ではない。私も感覚的にはそのように思っている。

 では、ソフトボールとパチンコ玉を同じように2階の窓から同時に落とせば、どちらが先に地面に到達するだろうか?

 直径10cmと20cmの鉄球だったら、如何であろう。

 想像ができない?

 それも正論。

 だったら、高さ1m、傾斜30°、その表面をピカピカに磨いた金属面でできている傾斜を作って、その頂上からソフトボールとパチンコ玉を転がしてみたら、どちらが先に坂を転がり終えるだろうか?斜面の長さは2mとなる。

 おそらく、2つの玉はほぼ同時に地面に到達する。

 次に、傾斜を45°にしてみる。

 その次は。60°に。

 これを、1°ずつ、増やしていくとどうなるか?どうなるべきであるか?

 傾斜が90°になったときは、窓から同時に2つの鉄球を落としたのと同じシチュエーションとなる。

 このような、思考実験、実証実験をやったのが、ガリレオ・ガリレイだ。

 アリストテレスは、「重いものの方が、速く落下する」と結論づけた。そして、多くの場合、そのような事例が観測できた。

 

 ガリレオの問題作「天文対話」が発刊されたのは、1632年。

 人々はそれまで2000年もの間、「重いものは、速く落下する。それは、より地球を強く愛しているからだ」との説を疑うことは無かった。

 ガリレオは、超重い鉄球と超軽い鉄球をヒモで結んで落下させたら、何が起きるかという思考実験を行った。

 アリストテレスの言う通りであれば、重い鉄球は、軽い方に比べてより速く落下しようとする。軽い鉄球は、より遅く落下しようとする。お互いは引っ張り合って、どこかで均衡した引っ張り合いになって、結果同時に着地するはず。

 この場合、ヒモで結んでいる場合と、そうでない場合、2組の鉄球の落下速度は異なるのであろうか。

 そうとは思えない。

 重いものは、より動きにくい。軽いものは、より動き易い。それならば、両者を同時に落下させれば、同時に着地するはずだ。

 落下速度は、ヒモの存在に左右されないはず。

 この原理を「慣性の法則」という。ガリレオの画期的発見だ。

 何よりも、素晴らしいのは、思考実験を実際の実験で実証して見せた事だ。

 彼が「近代科学の父」と呼ばれる所以である。

 彼の最も大きな功績は、「実験により仮説を実証して理論化する」というプロセスを現実化した事だ。他にも多くの天文学/物理学への貢献があるが、現代においても脈々とサイエンスの世界で継承されているガリレオの遺産は、「科学者は理論化のため実証する」という行為だ。

 恐らく、この行為は未来永劫、科学者達にとって普遍的な証明行為として継承されていくものと確信する。

 例の”リケジョ”には、「振り子の等時性」から再学習してもらわねばならないようだ。

 ガリレオは、医学生であった頃、ピサにある礼拝堂のシャンデリアの揺れと胸元にあるロウソクの揺らぎを見て、そのヒントを得たとの事である。

 

 

 

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