サンダーバード1号に学びたい
「サンダーバード」という、マリオネットを用いた特撮番組は誰もがご存知だと思う。
主人公は、「国際救助隊」・・・International Rescue、だ。
Five、Four、Three、Two・・・、One、という印象的なスタート画面を鮮明に記憶している。マリオネットであったが、あの兄弟達は最高にカッコ良かった。
1960年代のTV番組であるが、その発想は極めて先進的であり、まさに現代においてそのような存在が望まれるところだ。
別に、太平洋の無人島に秘密基地を作る必要はない。
国連直下の組織として、スイスあたりに堂々と居を構えてもらいたい。スイスがダメなら、もちろん、我が日本でもOKだ。
何なら、我家に下宿して頂いて構わない。ロケットの置き場はないが・・・
この番組は、SFであるが、世界のあちこちで起きる事故の描写、内容はリアルだ。そして、その救助の過酷な状況も、シビアに描かれている。物語は、毎回、ハッピーエンドで終わっているが、災害救助のシチュエーションは、大変厳しい。
この子供向け番組の中で、現代において我々が学び取るべき知恵は数多い。
その一例は、「移動司令室」という考え方だ。
サンダーバード1号、長男スコットが操縦するロケット。
彼は、いつも一番で現場に急行する。そして、「現地対策本部」を被救援組織と設置する。
現状把握、生命維持の緊急性、事態の展開予想、最適な救援方法を、現地の専門家達と話し合い、必要であれば救急指示を行う。堂々と、救助方法に対する関係者とのネゴシエーションまで行う。
「移動司令室」が必要な理由、有効性・重要性、そして、その担当が長男であり、沈着冷静な彼(スコット)でなければならない理由が明確に物語に紡ぎ出されている。
たかだか、イギリス製の子供向け番組であるのに、このリアリティに今更ながら驚かされる。
今から、50年前の番組・・・
災害時における初動動作と状況把握の重要性は、子供向けTV番組からでも学べる。
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ジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンが共演した「クリムゾン・タイド」のラスト・シーン、軍法会議での裁判長(?)の言葉が印象に残っている。
「今回の一連の事件においては、どちらも”正しかった”、そして、どちらも”間違っていた”」
核ミサイルの発射ボタンを、命令(戦前想定)通りに押そうとした艦長、ミサイル発射は正確な情報(現況)を把握できるまで、ぎりぎりまで待つべきだ、とした副長。
誰だって、核ミサイルなど打ちたくない。怖い。
それを貫徹させるのは、強力な意思だ。使命感、国家への忠誠心だ。ジーン・ハックマンはそれを全力で表現していた。
副長のデンゼル・ワシントンは、「命令変更の可能性がある」と判断した。
そうであれば、重要事態に直面して、その真偽は自身の目で確認すべきだと考えた。
猶予はないが、核ミサイルの発射ボタンを押す前に、まだやるべき情報収集が残っている、と彼は考えた。これも、艦長と同様、強い任務への自覚から派生した行動だ。
だから、軍事法廷は「どちらも正しく、どちらも間違った」と判決した。
このように、有事に際して最も重要な事は、現状を把握する事だ。
何が起きていて、どのように事態が進展するかを判断する事だ。
「情報収集と現状分析」
これを不足なく的確・効率的に行うには、平時からの訓練・鍛錬が必須だ。
的確な「情報収集」は、医師の問診と同じ。
あらゆる全方位的な知識・知見、経験と失敗の過去があるからこそ、的確な問診ができる。適切な質問は、適切な専門知識と経験が作り出すのだ。
日本のマスコミが、何かにつけてアホな質問しか出来ない理由は、いずれかのスキルが欠如しているからに他ならない。
「初動動作」が的確であるためには、情報収集と現状把握が完璧でなければならない。そして、それを確実に行えるのがプロフェッショナル、だ。
人命救助は難しい。
何より、時間が限られている。
組織的行動が必要となる。
救援は、一朝一夕で成し遂げられるものではない。
韓国のフェリー事故は、大変不幸なものであった。
そして、私達もそこに学ばねばならない。
3年前の震災時、「情報」が欲しくて対策本部を離れた責任者を、我が国のマスコミは袋だたきにした。
彼は、「官邸にいても、東電に聞いても、現地の情報は得られなかった」と言っていた。
「有事の際の初動動作」は、難しい。
後付けの非難であれば、誰でも出来る。
私達は、もっと学ばねばならない・・・