オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

Macのパワーアップ工事

 近頃、巷の牛丼屋では「パワーアップ工事」なるものが行われているそうだ。お客様に、より快適な環境・良質な食材を提供するため「真心を込めて」改装中らしい。

 なんだか、ごまかし・カモフラージュもこういう風にやられると、かえって痛々しいのだが・・・

 そう言えば、私の家の近所でも「パワーアップ中」。今日、現在でも、一向に新装オープンする気配はない。

 

 そんな中、Mac専用SSDトランセンドジャパンから発売されたとの記事を見た。

 トランセンドのホームページには、SSDと内蔵HDの換装映像が公開されていた。素晴らしいことに、OSのリカバリ機能を用いてワンタッチでデータ移行ができるようだ。

 また、Mac専用の精密ドライバが星形を含めて2本付属しているとのこと。これはありがたい。

 Macを所有した人にしか分からないことであるが、このマシンはボディのあちこちに星形ネジを使って部品止めをしている。ネジの先端が”+”にではなく、星形”☆”に切ってあるのだ。

 この手のネジはUSAではよく使われているそうだが、日本製品には見られない特殊なものだ。よって、私たちが普段から使う「ドライバー」では、Macは分解・組立できない。

 私はこのことを「Macintosh classic」を買った際、メモリ増設のため本体カバーを開けようとした時に初めて知った。

 因に当時のMac本体の分解は禁止されており、ユーザが勝手にカバーを外したら「メーカー保証対象外」になる決まりだった。ネジ止め部分には特殊な細工がしてあり、一度ネジを外すとメーカー側でその事が判別できる仕掛けになっている、とウワサされていた。

 何とも、敷居の高いマシンだったのである。

 また、近年のMacは精巧精緻に加工されている。Mac Book Proのボディは独特の曲面を持たせたアルミ製のものだ。本体は、極めて微細なネジで10カ所止めされている。それも、曲面上で。

 このネジを外すのには、慎重さが必要だ。不用意に扱うとネジ山を潰す事になる。

 その点、専用ドライバが2本付属している事は心強い。

 データ移行操作の簡易さと専用工具を具備している事、その割には値段がリーズナブルであることが気に入った。

 私はこの製品を購入して、牛丼屋に習いMacの「パワーアップ工事」を行う事にした。

 製品は、JetDrive420という。

 240GBのSSDだ。Amazonで19,800円。量販店では販売していない。欲しければ、ネット購入か秋葉原に行くしかない。

 ユーザーレビューは、ネット上ではまだ数が少ないが「良好」のようだった。

 

 ・・・

 

 Amazonで注文して数日後、モノは届いた。

 Mac純正品と見間違うような立派な梱包だった。

 箱を開けると、SSD、換装後のHDを収納するハードケース、手にしっくりとくるケースカバー(ブラック)、専用工具2本、アンビリバボーなほどプアな取扱説明書が入っていた。

 この「トリセツ」は使えない。

 一連の作業のキーとなる情報が全く書かれていない。作業の経緯を示す写真が9枚貼ってあるだけ。これを見てSSDの換装とデータ移行を行える人は「自作マニア」だ。

 私は、繰り返しトランセンドのポータルにUPされているWeb画像を確認した。この通りにやるしかない。Macの隣にThinkPadを置いて、トランセンドの(広告)映像を再生しながら作業を行った。

・・・

 しかし、NG。

 「容量が不足しているためOSをリストアできません」とのエラー表示。

 あれっ?

 エラー情報を確認してみると、転送元のMacのHDは250GB、転送先のJetDrive420:SSDは240GB。

 確かに単純なボリュームコピーが「不可」なのは理解できる。

 しかし、それがワンタッチで出来るからこそ、トランセンドMac専用SSDとして販売しているはず。事実、Webサイトには、その操作画像が掲載されている。

 これは一体どういうことだ?

 それとも、OSのバージョンにより操作が異なるのか?

 MavericksとSnowLeopardでリストア操作が異なるのだろうか?

 何度やっても結果は同じであった。手詰まり・・・

 

  仕方なく、トランセンドのサポートセンターに問い合わせた。間もなく、ご丁寧にも担当者から電話をもらった。

 現象を説明すると担当者からは「確かに、格納先のSSDの容量が240GBのため転送できません。これは、Mac OSの仕様によるものです。申し訳ありませんが、SSDにOSをクリーンインストールして下さい。方法は、Apple様のサポートセンタに問い合わせて下さい。」との事。

 「ちょっと、待って。おたくのポータルサイトや広告には簡単にOS移行ができる、って出ているじゃない。私のMacは2010Midだけれども、おたくのサイトで動作環境を確認して”OK”を確認した上で購入しているんだよ。OSの仕様でデータ移行できない、HDの容量によっては移行できないとは、どこにも告知されていないじゃない。これでは約束が違う。クリーン・インストールするくらいならこの製品を買ったりしない。製品を引き取るなり、何とかしてほしい」

 と主張したがサポートセンタのお兄さんは「申し訳ございません。OSの仕様ですので」の一点張り。

 「だったら、せめてどうやればOSの移行ができるのか教えてよ」と言うと「申し訳ございません。それはAppleのサポートセンタに問い合わせて下さい」

 「おかしいだろ。出来ると言って売ったものが、その通りに出来ない。なのに後の事はPCメーカーに聞け、とは一体どういうことだ。売ったのはお前らだろ」

 「申し訳ございません」

 「二度と買わない。ふざけるな」

 電話を切った私は不愉快だった。

 トランセンドは単にSSDを売ったのだ。Mac専用もへったくれもない。

 240GBで足りないのであれば、次は480GB、あるいは960GBの製品を選ぶしかないのだ。どこの誰が、そんな無駄なモノの買い方をすると言うのだろうか?

 容量不足をOSの仕様と言い訳をするくらいであれば、始めからMacと同容量のSSDを製造しておけば良いのだ。たった10GB多めにSSDを製造すれば良いだけのことだ。

 このことからも、この製品がMac専用に製造されたものではないことがよく分かる。単なる240GBの汎用品に特殊工具を付けただけなのだ。

 広告を信じた私がバカだった。二度とこのメーカー(トランセンド)は使わない。

 返品されてきたSSDには、Appleのサポートサイトの事象該当URLが紹介されていた。

 マニュアル通りに対応したお兄さんであったが、私の窮状を察した上で補足情報を付加してくれたのだろう。

 彼の「心配り」には感謝している。しかし、残念ながらそのサイト情報は参考にはならなかった。

 Webサイトで紹介されていたような操作では、到底実現できない事案である事が明白であった。

 私は結局、クリーンインストールを選択することにした。

 

・・・・・

 

 今朝、ワールドカップのスペインVSオランダ戦を見ながらOSXのインストールを行った。

 色々、トラブルはあったが、数時間で無事OSのリニューアルは終わった。

 実は、Mavericks再インストールの手順は驚くほど簡単であったことに驚いている。

 ネット上から、Mavericksのインストールをする限りにおいては、操作は実に単純だ。Apple恐るべし、というか「さ・す・が」だ。

 

 SSDへの換装後、確かに動作は俊敏になった、と思う。

 私の場合、Macの利用法の大半はネットだ。

 「パワーアップ」の恩恵は少ない方だとは思うが、それでも満足感はある。

 今、しばらくMacとのお付き合いが続けられそうだ。

 そして、Surface Pro3を購入することは恐らくない。

 一方、トランセンドのマーケティングは頂けない。

 敢えて言うが、このような広告宣伝は「詐欺商法」に極めて近い、と思っている。