オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

アスリート達へ

 熱戦から一夜明けた。

 この喪失感、失望感は、半端ではない。残念極まりない。

 SAMURAI JAPANの一次リーグ敗退は事実上、決定したと言って良い。来週のコロムビア戦は、当然見るし応援する。

 試合は、勝敗に関係なく応援する、と言いたいところであるが、関係ない訳がない。勝てなくては駄目だ。しかし、相手は強敵であり、JAPANのこれまでの2試合を振り返ってみるに「勝てる状況には到底ない」。

 でも、応援するよ…

 本田が言うに、ギリシアは、後半に入ってからは無理をせずに引き分けを狙った試合運びをしていたそうだ。彼らは、次の対戦相手であるコートジボワールには勝てる、とでも思っているのだろうか。

 いずれにせよ、例え次の試合に日本が勝てたとしても、決勝トーナメントに行ける可能性は極めて低い。私の中では「終わった」と思っている。

 

 4年前の南アフリカ大会が終わった時、彼らはそれぞれの決意のもと、自分たちの考える道を歩み始めた。

 俊輔は、NISSANで生きようと決めた。

 ウッチーは、岡田監督の言葉を胸に4年後の大会を目指し、欧州に渡った。

 香川も、自分が起用されなかった理由を自分なりに分析・理解して、JAPANを引っ張れる選手になろうとドイツに渡った。

 本田は、何故かロシアに新天地を求めた。彼は言っていた。「優勝を目指すと僕たちが言ってはいけないんですか?」

 彼は、決してメジャーとは言えないロシアのリーグで、黙々と自らの求めるプレースタイルを追求し続けた。

 天才柿谷は、まだ水面下にいた。

 母親思いのNICE GAY、長友はイタリアの名門クラブに行った。そして、独特の左サイドからの攻撃パターンをチームJAPANにもたらした。

 今や、彼がいないチームJAPANはその存在自体が想像できない。

 

 2年前、フォルクスブルグに長谷部を応援に行ったが、彼はその時、試合に出してもらえなかった。

 マガト(監督)のことは、私も許せない。恐らく彼女は、マガトのことを一生許さないだろう。

 しかし、彼は、長谷部は、その逆境に飲み込まれる事はなかった。試合が終了した後、サポーターがいなくなったピッチで、彼は別のメンバーと黙々と走り込みをしていた。

 誰も、彼らの事を気に留めていなかった。

 長谷部は黙々と走っていた。彼女は長谷部に声援を送ったが、彼がそれに返答する事はなかった。ただ、走り続けていた。次の試合に出場できるかも、分からないのに。

 彼女は、そんな彼をじっと見つめていた。

 その時の対戦相手は、ドルトムント。黄色の強豪チーム。

 当時、この強豪を引っ張っていたのが香川だ。

 この試合は3対1で、ドルトムントが勝ったが、香川は得点の全てに絡んでいた。

 彼女は、寂しそうな顔でこの試合を見ていた。

 彼女が、フォルクスブルグ VS ドルトムント戦を選んだのは、長谷部が出場できないことを予想しての事だったらしい。

 もし彼が、マガトに試合に出してもらえなくても、せめて、香川だけでも見れるように・・、と言う事だったらしい。

 ちょっと、ウルッ、とくる話なのであるが「どうせなら、シャルケ(ウッチーがいる)相手でも良かったなぁ〜」と後日言っていたので、そんな深刻な話ではなかったようだ。

 日本から遠くはなれたドイツの地で、今やスーパースターと言って良い、香川、内田、長谷部は各々の信じる道を歩んでいた。

 

 遠藤は・・・、遠藤は大阪を離れなかった。

 この努力の天才は、国内リーグで地道に、しかし着々と自力を付けていった。

 自らの信じる道を妥協する事なく、ストイックに歩み続けた。もはや、選手としての体力のピークは過ぎているのかもしれない。

 しかし、技術を積み上げる事によってチームに貢献できることをこの男は知っていたようだ。

 「そこにフワッとボールが出てくる」「ここで蹴れ、という場所にパスがくる」

 遠藤のパスは、そんな例えがなされるそうだ。

 彼の狙い澄まされたパスは、選手とシチュエーションを選ぶようだ。

 4年前から、そして今でも彼は「一流」だ。

 ワールドカップ予選では招集されていなかったが、蛍がずば抜けた試合感を持っているのは、この数試合を見ただけで分かる。シュアーな選手だ。いきなりの国際大会への起用に確実な貢献が出来ているのは、日頃の積み重ね、鍛錬がなせる技だと思う。

 大久保についてもそう。

 岡崎や清武だけではない。他にも素晴らしい選手たちがいる。

 皆、努力を重ねてきている。それは、彼らの言動から理解できる。

 彼らは、アスリートとしてだけではなく、日本代表としての自意識・自覚も持ち合わせている。一般に、あの年齢の若者があのように冷静沈着な発言が出来る方が珍しい。如何に、自らのポジショニングを日頃から意識しているかを表している。

 

 最も悔しい思いをしているのは彼らだ。その関係者たちだ。

 「4年間、何をやってきたのだ?」

 この言葉を発するのは、サポーターである私だけではない。

 選手自身がそう思っている。

 だから、私は責めない。

 セルジオ越後が言うように「厳しい評論からしか強いチームは生まれない」のかも知れない。

 でも、私は彼らを責めようとは思わない。彼らは、よく頑張ってきた。ストイックにサッカーに打ち込んできた。それは事実だ。私はそれを認めたい。

 

 サッカーの裾野は広い。およそ、全世界の国々で愛好されているスポーツだろう。野球などの比ではない。

 だから、レベルが著しく高い。

 欧州リーグを見ても分かるが、日本のレベルはまだまだ発展途上だ。

 私達はまだまだ鍛錬せねばならない。サポーターも。

 あのカップは、想像以上に高い極みにある。

 そして、それを目指す意義はある。

 また、次がある・・・