世界名作劇場
午後5時30分、スーパータイムを見る。この頃の安藤さん(キャスター)にはまだ若さがあった。
午後6時、あんみつ姫が始まる。別にたいした話ではないのだが、姫がかわいいので惰性で見る。
午後6時30分、サザエさん。これは笑いながら見る。日曜日の夕方を実感する。明日から仕事という意識が次第に強くなっていく。
午後7時、タッチ。達也と南はどうなるのだろうかと、気を揉みながら見る。南が可愛いと思う私。
午後7時30分、正座をしてTVを見る。見る・・・。見る・・・。
「何見て泣いてるの?」
背中越しに彼女から問い合わせがあった。
「小公女セーラ・・・」
「プッ!」
彼女が笑った。
「何が可笑しい」
「だって、AHahaha----」
「この話の結末知ってるの?」
「知ってるよ。『小公女』のお話だよ」
「セーラは幸せになれるの?」
「教えてあげな〜い」
「…見るに耐えられない。ラビニアを何とかしてほしい。ミンチン先生もあんまりだ・・・」
「プッ!笑える」
「そんなに、可笑しいか」
「大丈夫、セーラは幸せになれるよ。ハッピーエンド」
「なら、安心して見れる。邪魔をしないでくれ・・」
--------------------------------------------------
数日後、テーブルの上に一冊の本が置いてあった。タイトルは「小公女」。
彼女は「話のゆく先が気になるみたいだから…」と言っていた。
いや、別にTVで見るからいいのに・・・
それから20年以上たったある日、彼女は私に一冊の童話本を渡して言った。
「これを読んで人生を考え直しな。あなたは間違っている」
「・・・」
本のタイトルは「フランダースの犬」
これが何を意味するものなのか、その後も考え続けたが分からなかった。
私は、最後に呟いた。「パトラッシュ、僕、もう考え疲れたよ・・」
-----------------------------------------
その後も数年間にわたり、私は彼女の冷やかしを受け続けた。彼女は、ラビニアがセーラにそうしたように私を嘲笑った。「何見て泣いてるのぉ〜」と。
名作が続いた。
「七つの海のティコ」に出てくる七海(ななみ)の吹き替えをやっているのは、林原めぐみさんだ。エヴァンゲリオンで超有名になる少し前の彼女の演技が堪能出来る。父親のスコット役は「赤い彗星」がやっている。夢とファンタジーに満ちた作品だ。これを見ると反捕鯨派になると思う。
「ロミオの青い空」は感動だった。ロミオとビアンカが結ばれるという結末は嬉しかった。ロミオとアルフレドの友情は永遠のものとなったのだ。
「名犬ラッシー」は中途半端な終わり方だった。噂では低視聴率故の「打ち切り」だったらしい。名番組打ち切りという愚行の伏線はこの頃からあった。因にラッシーはコリーであるが、私はシェットランドシープドックが好き。何故か我が家の2匹はコーギーであるが…
「家なき子レミ」。ヴィタリスが命を落とすシーンは見ていられない。ブルドッグまで殺されることはないだろう。何でこういうことになるんだ…と思った。このお話、途中からのミリガン婦人、マチアの登場がなければ、とても最後まで見ていられなかった。
この後、世界名作劇場は時を経て「少女コゼット」を制作する。そう、レ・ミゼラブルだ。私はこれを見ていない。・・・が、恐らく「見ていられない」と思う
「世界名作劇場」
見ていられないが、見たいので復活して欲しいと思っている矛盾…
フジTVの中で、数少ない名番組。
この後番組の「中華一番」は悪いものではなかったが、ハンカチを握りしめるようなことはなかった。
フジTVは何で「世界名作劇場」を打ち切ったのであろうか。
これ以降のどの番組も、これを超えることができていない。