オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

SUPRAの復活に憶う

 ふ〜ん。本当にやるんですか…。どんなもんかねぇ…

 

 トヨタBMWと車台を共通化した上で「スープラ」を復活させるとの記事を見た。

 先日のメルセデス・クローンの「4気筒スカイライン」と似たお話だ。

 日産がメルセデスならトヨタBMWですか。

 車台共通とは、どの程度のものなのか・・。シャシーが同じなのか、それとも、ボディまでコピーなのか、少し気にはなる。しかし、あまり、大きな期待を持つべきでも無い、と考えている。

 トヨタが「スープラ」というブランドをどのように扱ってきたか、という歴史(経緯)を見ると、今回の企画も「何だかなぁ〜」の域をでない。大した期待感はない。

 

 「スープラ」とは、そもそもは「セリカXX(ダブルエックスと読む)」のUSAネームだ。

 あちらでは、当時「ダットサンZ」(日本名:フェアレディZ)が飛ぶように売れていたが、その対抗馬としてトヨタが送り込んだのが「スープラ」。

 変な名前である。

 そのコンテクストは、日本人には理解出来ない。

 日本では「セリカXX」は、ほどほど売れていたと思う。私も若い頃、「いいなぁ」と思っていた。何と言っても「かっこいい」ので。

 

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 搭載エンジンは、1G-GEUや5M-GEU。つまり、ソアラの2ℓ、2.8ℓモデルと同じ。

 国内でのライバルは「フェアレディZ」というよりは「スカイラインGT」であったようだ。

 このあたり、メーカーの思惑とユーザの捉え方には差があったかもしれない(Zは別格という考え方をするユーザも一部にはいたので…)。

 ・・・と、ここまでの話は、良いのだが。

 

 調べてみると1986年のことらしい。

 トヨタは突如、「トヨタ3000GT」というスポーツカーを発表した。

 「!」だ。

 いや「!!!!!!!!!」だ。

 何と、トヨタ2000GTの現代版か?

 こ、これは凄いことになる・・・、と思ったのは私だけではあるまい。

 車が大好きな男達は熱狂し、わくわくし、果たしてどのようなスポーツカーがトヨタからリリースされるのか心待ちにした。

 少し大げさに言うと夜も眠れないくらい・・・(眠っていたが)。

 数日後、TVのCMで配信されたトヨタ3000GT」の姿が・・・これだ。

 

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 CMではご丁寧にも、トヨタ2000GTの映像を流してからこの”絵”をオーバーラップさせていた。

 私は悪夢を見ているのか、と目を疑った。

 しかし、どうやらこれがトヨタ3000GT」らしい。「スープラ」という変な名前も付いている。

 エンジンは、1G-GTEUと7M-GTEU。

 別になんと言うことはない。マークⅡ3兄弟の2ℓ版に載っている燃費のチョー悪いツィンターボとソアラ3ℓモデルに搭載済みの既出エンジン。

 珍しくも何ともない。

 サプライズは、全くなかった。

 それよりもトヨタ3000GT」と2000GTを同列に扱うトヨタマーケティングが信じられなかった。

 トヨタは、トヨタ2000GT」というブランドを一体何だ、と思っていたのだろうか。

 今一度「スープラ」のスタイルを確認してみる・・・

 

 このみっともないスタイルは一体何なのだ。不格好。最低だ。

 私には、鰹節かマヨネーズにしか見えない。

 これがトヨタの言う「国産最強のGTカー」か?

 ロングノーズ・ショートデッキであれば、何でも良いのか?

 MAZDA RX-7が出現したのは1978年。あれからすでに10年近くが経っている。

 今更、こんなデザインのクルマをトヨタ2000GT」になぞらえて売ろうとするトヨタの魂胆が気に食わなかった。

 いや、分かっている。このクルマがなぜマヨネーズなのかは。

 USAに売るからだ。だから「スープラ」という名が付いているのだ。これは日本ではなくUSA向けに作られたスポーツカーなのだ。

 私にはマヨネーズでも、USAの人達から見れば「昔ながらのスポーツカー」なのだ。

 しかし、この車には本当に驚いた。

 最新型である筈なのに、既に博物館行きの中古車のように見えた。こんなもんに、300万円も払うバカが果たしているのだろうか?と疑ったが、実際には「いた」。相当数。

 他人の趣味に意見を挟むつもりはない…

 

 これと同じ時期、日産は7代目スカイラインに「2ドア・スポーツクーペ」なるモデルを追加した。

 このクーペは素晴らしかった。抜群にかっこ良かった。

 4ドアセダンは、絶望的にダサく、早く廃車にしてほしいと願っていたが、クーペにするとまるで”別人”のようになった。スペックも申し分無い。

 しかし・・・。

 日産は、この2ドアクーペに「GTS」というモデル名を付けただけであった。

 「なんてもったいない・・・」私はそう考えていた。

 そう、「GT-R」とネーミングすれば良いのに、と思ったのだ。

 噂はあった。「GT-Rが復活するらしい」というウワサ。

 しかし日産は「これはGT-Rではない」とはっきり言っていた。GT-Rは特別なクルマであり、「これはそうではない」と。

 何と言う潔さ、拘り、技術者魂。

 私が日産が好きであった理由は、こういう愚直なところ。

 一方、トヨタを好きになれないのは、時々あまりに軽々しく、人をバカにしたようなマーケティングをするところだ。

 「クルマなんて、せいぜいこんなもんですよ」

 「難しいことは、一般の人には分かりっこ無いでしょ」

 売る側のこういう姿勢が透けて見える気がした。

 トヨタの傲慢。

 その象徴の一つが「スープラ」だ。

 トヨタ2000GTの名を使って、USA仕様のただデカい、みっともないGTカーを売りつけようとする魂胆。

 当時の私はトヨタのこのような姿勢を「堕落」と捉えていた・・・

 

・・・・・・・・・

 

 日産が「GT-R」の名を復活させたのは、これから3年後。

 そして、その名は今も継承されている。

 現在のGT-Rについては、もはや説明の必要は無いだろう。日産のエンジニア達のピュアな情熱は、カルロス・ゴーンによって報われた。

 「国産最強GTカー」の栄誉が今どこにあるかは明らかだ。

 そして、懐かしい「スープラ」という名前。

 果たして、トヨタの「情熱」は体現できているのだろうか・・・

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これが実物。2020年1月…