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オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

Hybrid6の意味するもの

 バレーボール・ワールドグランプリWGP)が開催されている。

 新生「火の鳥JAPAN」は、ロシア、トルコ、そして昨日、何と中国まで撃破し、破竹の連勝を続けている。

 ロンドンオリンピックが終了して以降、新メンバー、新システムでWGPに臨んだわけであるが、その成果は出つつあると言える。

 「Hybrid6」とは、珍妙な名であるが、今のところ有効に機能しているようだ。

 このシステムについての評価は、今後、関係各所によって行われるであろうが、私は結構良いと思っている(解説者の河合俊一や吉原知子は何をやっても非難はしない)。

 このシステムを日本が取る主な理由は以下のものだと思う。

 

・分業制(ウィング/ミドル等)をひいても大きな成果が得られなかった

・特にセンタープレーヤー、ミドルブロッカーのパフォーマンスが低い

・その結果は、各試合におけるブロックポイントの少なさに顕著に現れている

・センター攻撃の得点も、他チームに比べて低い

・仕方ないので、ブロック力の弱さは、レシーブ力でカバーしてきた(これは、練習量の多さに起因する)

 

 つまり、火の鳥は「守備力」で世界ランク3位にまでなったチームなのだ。

 竹下が言っていたが、本当に守備の練習は厳しかったそうだ。真鍋監督が「必ずメダルがとれる」というから信じて練習を続けたそうだ。

 

 攻撃力は、木村と江畑の調子如何。

 これは、見方を変えると、相手側チームは木村と江畑だけをマークすれば良いこととなり、事実、これまでの試合はそうなっていた。

 この2人には、頻繁に3枚ブロックが付くことがあった。江畑は、その身長の低さにもかかわらず、果敢に攻めの姿勢を取り続けていた。これは、精神的には相当負荷が重かったと思う。

 また、竹下は世界でトップクラスのセッターであることは間違いなかったが、如何せん身長が低い。

 彼女が前衛にいる際のポジションはライトであるが、相手側アタッカーが竹下のブロックの上をストレートで抜いてくることがしばしばあり、このエリアをどう守備するかは日本の継続的課題、弱点となっていた。

 佐野がいくら優秀なリベロであっても、センターからライトまでの後衛エリアを全てカバーすることは不可能だ。実際は、このエリアを守っていたのは木村だ。彼女はレシーブも抜群に上手い。

 

 さて、Hybrid6」の特徴を簡単に言ってしまうと、ミドルブッカーである岩坂や山口を起用せず、石井、石田、大野で布陣するということだ。

 岩坂、山口を使わないということは、センターポジションでのブロック専門要員を置かない、と言うこと。攻撃面では、ブロード攻撃を使わないことになる(ブロードは誰にでもできるものではない)。

 センターからの攻撃のバリエーションは、昨日までの試合を見る限りでは、Aクイックと低い(早い)トスからのアタック。石井はバックアタックも打っていたと思う。

 ロシア戦では、センターからの攻撃があまり見られなかったが、トルコ・中国戦では有効に使っていたと思う。

 

 これまでの試合を見る限り、ミドルブロッカーを置かないことについては、十分に埋め合わせができていると言える。逆に言えば、失礼ながら旧メンバの荒木や山本のパフォーマンスがその程度のものであったということだ。

 真鍋監督は、日本に世界レベルのミドルブッカーがいないことを是認し、居直ったのだ。

 センターブロックの守備力が落ちたとしても、伝統のレシーブ力と連携力で何とかなる、と考えたのだ。

 これは、発想の転換だ。

 そして、大型選手が少ない日本の特徴を逆手にとった考え方だ。

 一般に、180cmを超える大型選手のレシーブ力は、170cm台の選手のそれよりも劣ることが多い。木村のレシーブ力は例外だと言える。

 今回の火の鳥チームは身長170cm後半の選手が多い。

 これは、「大き目」なだけであり、業界では決して高身長とは言えない。

 一方でこのクラスには、守備の上手い選手、色々な攻撃ができる選手、器用な選手が多い(日本の特徴)。

 真鍋監督は、これらの選手を集めてHybrid6」をやろうと考えた。もともと、伝統的に守備が上手いチームだから、大型のミドルブロッカーを置かずに、攻撃のバリエーションを作ろうという発想。

 これは、結構行けるかも知れない・・・

 

 Hybrid6」の有効性を占う選手がいる。

 それはセッターの宮下だ。

 彼女は、身長177cm。日本のセッターとしては久しぶりの大型選手だ(中田久美以来か?)。

 彼女は、前衛でのポジションはセンター(竹下はライトだった)。

 つまり、ミドルブロッカーとセッターを兼任しているのだ!

 試合を見ていると、彼女は前衛の全てのポジションでセンターブロックを飛び、着地後、すぐさまセッターの仕事に切り替えている。そして、ブロックカバーやレシーブも堅実にこなしている。これは、選手にとっては、相当忙しく体力的にもきつい仕事だ。

 しかし、彼女はトルコ戦以降、それをこなしつつある。

 何本か、ブロックポイントまで挙げているし、守備面でも大いに貢献している。

 彼女は、セッターとしては十分な技術を持ち合わせているが、トスの精度で言えば中道の方が上かも知れない。

 しかし、中道はミドルブロッカーを兼務できない。

 中道をセッターで使う場合は、やはりライトポジションにせざるを得ない。この時Hybrid6」は機能しない(ロシア戦の第4セットがそう)。

 やはりHybrid6」は、宮下という有能な選手がいるからこそ成り立っているのだと思う。

 彼女に注目、だ。

 

 陰で良い仕事をしている選手もいる。新鍋だ。

 守備で宮下がファーストタッチをした場合の、セッターカバーをさりげなくやっている。

 彼女のあげるトスはとても奇麗だ。

 新鍋はライトからの攻撃もできる。この人もオールラウンドプレーヤー。

 大型選手ではない(173cm)が、その立ち回りの上手さ、巧妙さは、栗原が全盛期の頃の木村を彷彿させる。木村は今では「絶対エース」であるが、センタープレイヤーもこなせる(器用なのだ)。私は、彼女のプレーは買っている。

 長岡の加入は大きい。

 彼女の登場で、相手側チームは木村だけをマークすれば良い訳ではなくなった。

 長岡は木村との対角ポジションではない(対角は石井)。よって、前衛のレフトに木村、ライトに長岡が並ぶ時がある。

 このローテーションの時、火の鳥の攻撃力は最大となる。

 長岡はサウスポーなので、ライトからの攻撃力が極めて高い。また、彼女のフォームは少し変則的なので、相手側ブロックはアタックコースを読み辛いと思う。

 

 今の火の鳥JAPAN」はもっと強くなる。期待出来る。

 彼女達の夢の実現に向けて、応援していきたいと思う。

 

 個人的嗜好としては、山口舞さんのプレーが見たい、と強く思っている・・・

 

 (選手の皆さんの敬称は省略しています)