オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

結婚のコスパ

http://mainichi.jp/select/news/20150507k0000e040038000c.html

 

 先日、上記のニュース記事を見た。

 何だかなぁ〜、という感想だ。

 本当に、こんなことを思う若者がいるのだろうか。

 おっさんの私としては、このような考え・価値観をもつ若者が多く存在するというのであれば、深刻な社会問題であると思うし、レアケースを取り扱った記事なのであれば、全くニュースとしての意味が無いと思っている。

 別に「ヨタ記事」として、スルーすれば良いのであるが、実際の所、私は気分を害している。

 一部の意見を誇張した新聞社と、もし本当にその趣旨の発言したのであれば「その人」に対して。

 内容は、26歳のそれも公務員という堅い仕事をしている大人の言うことではない。

 「結婚しない」という価値観を微塵も否定はしない。

 当人の非論理的な思考回路と言葉使いを批判したい。

 まず「コスパ」という言葉の適用が間違っている。「結婚」という用語に引き合いに出す局面ではない。絵画の評価に「描画時間」を用いるように。

 そして、「コストパフォーマンス」を敢えて結婚の価値観を測る尺度とするのであれば、その分母と分子、INPUTとOUTPUTの引数を定義してから発言してほしい。

 これでは、何を計って結婚の価値を評価しているのかさっぱり分からない。

 INPUTが結婚後の生計費なのであれば、OUTPUTは何を金額換算したものだろうか?

 「満足度?」「幸福度?」

 それらば、その金額換算の変換式を示してほしい。

 私も、これまでの結婚生活のコスパを計算してみたいので。

 この人、一応、公務員試験に合格するほどの秀才なのだ。肝心要の部分については、若者言葉ではなく、真面目な語彙を選択してほしい。さもなくば、「ふ〜ん、今時の公務員はこの程度で採用されるんだ」と思ってしまう。

 恐らく、結婚に対する旧態とした社会意識を揶揄するために意識的に不適切な用法をしたのであろうが、それにしても趣味が悪すぎて知性のかけらも感じさせない。

 意図的に第3者を不愉快にさせるだけの下品な発言内容であり、記事を読んでしまった者としては、解釈・対処に困ってしまう。

 私はすっかり記事に釣られている。

 私は、このような非論理的な会話(記事?)が苦手だ。頭がくらくらする。すごい、ストレスを感じる。

 読まなきゃよかった・・・

 

 この26歳の若者が本当に存在するとしても、今の時代であれば、彼は本当に結婚しなくても何の不都合も無い。

 未婚を理由に職業差別をされることはないし、昇進に不利な訳でもない。

 総理大臣でもなければ伴侶がいないこと自体で仕事(外交シーン)で恥をかくこともない(小泉さんやサルコジさんは別格)。

 そして、今や、職場の部下から結婚式の仲人を頼まれることも皆無だろう。

 以前は「男は独身の間は半人前」と言われたものであるが、これは、昭和の価値観だ。

 この言葉の背景には「男は女を養ってこそ一人前」という恐ろしい差別意識が内在している。こんな価値観は絶滅した方が良い。拘りは全く不要だ。

 

 しかし、結婚しない理由の「子供はお金がかかる」については、事実であっても、全ての要因にはなり得ないと思う。

 養育費、教育費は確かに相当量必要であるが、実際にそれを”いくら”支出するかについて決定するのは、子供ではなく”親”の意思によるものだ。

 子供に対し、思った(願った)ような、十分(有り余る程度)な養育費をかけられない、という経済事情が存在することは現実であるが、それでも、過分な支出を強要する理由があるのであれば、その多くは”世間体”ではないか。

 高校卒業までであれば、家計の経済状況を踏まえた、身の丈に会った子育ては事実可能だと思う。

 非婚の理由として「子供に金がかかる」という表現では、少し言葉がもの足りない。経験者としては、発言者に対し補足を求めたい。

 

 結婚に対する価値観に関する会話の中で「コスパ」などと言う用語を使う時点でアウトだと批判しているのであるが、別にその人が生涯独身であることはその人の勝手だ。

 人に、あるいは社会通念に強要されて結婚をするものではない。

 一生、一人でいることが何か悪い訳ではない。当たり前だ。自らの意思に従えば良い。

 でも、「コスパ」などと言う言葉で既婚者を煽らないでほしい。

 それは冒涜だ。

 既婚者の一人として、もの凄く不愉快だった。

 私にとって妻は、法律上では配偶者であり、実質は一生の、生涯の友人だ。

 私のことを両親以上に理解してくれている面もある。因に夫婦とはいえ、相手は所詮他人だ。しかし、肉親ではないのに、それ以上に相手を理解できるのが夫婦というものだ。

 「生きる」という壮大な目的を果たす上で、常にとなりにいてくれたのが彼女であり、今後もそうあってほしいと考えている。

 結婚を「コスパ」で計ることの罪悪を知ってほしい。