厚化粧の下
つい先日、三菱自動車について書いたばかりであるが、私の悪い予想はどうやら当たっているようだ。
この数日の記者会見の状況を見ていると、事態は目を当てられない方向に向かっている。想像以上に、あの会社は腐っていた…。
「三菱ブランド」
関係者は、斯様な偶像にすがっている場合ではない。
事態の深刻さに鑑みて、早急にありとあらゆる対策を打たないと、本当に会社清算を余儀なくされ兼ねない。
三菱だから、などとゆめゆめ勝手な妄想をしない方が良い。戦前と戦後では、”財閥” の意味は全く異なっているのだ。
週刊誌の取材に、三菱自動車社長の親父殿が随分と勝手なことを答えているようであるが、調子をこいていると、世間からは三菱全体がそのような風土・文化なのだと誤解されかねない。あまり風評を見縊らない方が良いと忠告しておく。
さて、菱形の会社はタコ殴りのボコボコ状態である。批判した私が見ていても気の毒なくらいに。まあ、因果応報であるが。
しかし、少し待って欲しい。
燃費に関するデータ不正、改ざんは到底許されることではないが、私達、日本人全員が自覚しておくことがある。
「実用燃費」という考えてみれば奇天烈な日本語がある。
ご存知のように、燃費のカタログ値と実測値の違いを表した言葉だ。
一般に、日本車は特にドイツ車に比べると実用燃費が著しく劣る傾向にあると業界では見られていた(結構前から…)。
私達の世間話の中でも「ドイツ車の実用燃費は良いから」という会話は頻繁にあった。
一例を示す。
初代プリウス:28Km/ℓ → 13Km/ℓ(46%)
2代目プリウス:35.5Km/ℓ → 15Km/ℓ(42%)
VW UP!:23.1Km/ℓ → 15Km/ℓ(65%)
私の所有していた車のカタログ値と実用燃費の悪かった時の値の比較だ。
カタログスペックの目安の話をしているので、敢えて条件の悪い時の数値を出している。それでも、プリウスとUP!の違いは歴然だ。
実際、UP!は高速道路を走らなくても20Km/ℓ近い燃費を出すことはフツーにある。これは、プリウスには無かった。
「当たりが悪いんでしょ」
そうかもしれない。しかし、10年以上、ハイブリッドカーに乗っているのだ。「当たり」で済まされてはたまらない。
因に「モーターファン別冊 VW UP!のすべて」(H24.11.9発行)に、UP!、アクア、FITハイブリッドの "燃費カタログ値達成率" という記事が掲載されている。
東京の四谷から首都高、中央高速を乗り継いで富士山を回って河口湖から帰ってくるというルート(330Km)で、この3車の実用燃費がカタログに比べてどうであったかを調査したものだ。
その結果。
①UP! : 22.7Km/ℓ(91%)
②FIT:25.0Km/ℓ(82%)
③アクア:26.0Km/ℓ(64%)
別段、トヨタとホンダを貶めたい訳では無い。絶対燃費は皆優秀だ。FITは先日、沖縄に行った際にレンタカーを利用したが、3日間で23.0Km/ℓだった。これが実力だと思う。
私が問題にしたいのは「カタログ値」だ。
いくらなんでも盛り過ぎだろう。このような数値、日本のどのような道を走っても出てこない。
本来、日常の利用シーンになぞって走った場合の燃費目安を示したものが「JC08」モードというのであれば、今自動車メーカーがカタログに表示している数値は皆 "偽造"だ。
スリーダイヤだけを叩けば良いものではない。
だって、現にVWの実用燃費はほぼカタログ通りではないか。
日本車は、今回の事件よりもはるか、ずーーーーっと前から、消費者から見ればあり得ない計測数値を カタログに確信犯として掲載してきており、運輸省もそれを見過ごしてきているのだ。
何のことは無い。自動車業界では、皆、多かれ少なかれ鉛筆を舐めている、ということだ。
だから、私はこれ以上、三菱のことは責めない。
それよりも、これを機に業界として真摯に製品を作って欲しい。
見せかけのカタログスペックではなく、実用的な性能で競争してほしい。
見かけは綺麗な美人であるが化粧の下を覗くととんでもない素顔が隠れている…
日本の車は、そんなものであってほしくない。