オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

趣味の実益

 昨年の11月頃から、平日の寝るまでの少しの時間、朝起きてニュースチェックを終えて家を出るまでのちょっとだけ、休日の昼間の結構な範囲、少しづつプログラミングしていた。

 内容は、いつかこのブログに書いたことのある天文計算プログラムだ。

 当初は、C言語の文法に悩まされた(今も)が、慣れるにつれ何とか自分が思ったようなコードを書く事ができるようになって来た。

 私は職業プログラマーではないし、SEでもない。あくまでも素人が趣味の範囲で楽しみながら書いているコードだ。

 このような作業は、趣味とは言え、やはり何かしらの目的・目標がないと続けられるものでもない。面白いと言えばその通りであるが、そうでもないようなときもある。

 「こんなことがやりたい」「あんな風にしたい」という思いを持ってこそ、コツコツとコードを書けるのであり、Compile & Go!の結果が狙い通りだった時の快感はそれだからこそ得られたものである。

 半年近くも、閑を見つけてはシコシコとキーボード撃ち続けたのだから、やはりどこかで一定の成果は見たいものだ。

 先週末、ついにやりたかったことの一部が実現した。

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 これは全天の恒星図(Star Atlas)だ。

 恒星データは、ピッパルコスのデータを用いている。これに、太陽系9惑星の1年間の軌道を重ねた。正確には8惑星であるが個人的な想いから、PLUTO冥王星)は省略していない。

 時間は、2018年5月1日(22:00)から2019年5月1日までのピッタリ1年間。

 星図の右下には軌道の判例を掲載した。

 太陽の通り道(黄道)は黄色で描写してある。線が重ならず地図上を丁度一周している事が分かると思う。グレーの二線は水星と金星。

 火星は一番分かりやすいよう赤色で塗っている。地図の左側、赤経20Hあたりが開始位置で途中でグルッと1週回転している。これが惑星の”逆行”というもの。”星が惑わす”と例えられる所以である。

 火星の公転周期はざっと地球の2倍程度なので1年間で全天は1周しない。赤経5Hあたりで1年後の5月を迎える。

 木星は少し分かりづらいが、火星軌道の開始位置の右隣にある暗いブルーの線がそれだ。火星ほど大きくは移動しない。2018年は天秤座から蠍座までの4H程度をゆっくりと散歩する。

 これより遠い外惑星はプロットはされているが、この絵からは見えづらい。

 私がやりたかったのは、ある年月日の惑星が全天のどこに位置するか、季節によりどこを移動していくのかを1発で表示することだ。

 「それが何の役にたつのか?」

 一度に多くの惑星の観測をするのには、1年間のいつ頃が適しているかを知ることができる。

 先の星図を見ればわかるように、火星、木星土星、金星等はいつも一緒に手を繋いで軌道上を移動しているのではない。みんなあちこちに散らばって勝手に各々違うスピードで天空を移動している。

 いつ、何時、火星と土星が一度に観測できるかなんて、その手の本を持っていないとわからない。このプログラムを使えば、それをあらかじめ計算できるのだ。

 ということで、素人の趣味でやっているプログラムであるが、同じく趣味の天体観測には有用なものであるのだ。

 実益を備えたプログラムなのだから、これはこれで優秀であり機能的には満足である。

 これは、趣味が実益を生み、それがまた趣味を潤すという珍しく、ありがたい話なのだ。自己満足であるが。

 

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 こんな遊びもできる。

 上の画面は、2018年から今後100年間の太陽系惑星の軌道をプロットしたものだ。

 火星(赤色)の動きが面白い。黄道上を上に下にくるくると回りながら移動している。

 この中の注目は一番下側を移動する青色の惑星。100年間で全天の半分も動かない。これでは本当に移動しているのか、どうか、なかなか観測しずらい。

 これが冥王星だ。

 公転周期は約248年。発見されたのが1930年であるから今年までに88年分、1/3程度の軌道しか移動していない。今後100年間をみても全軌道をトレースできる訳ではないということ。

 冥王星の軌道が他の惑星と比べて黄道面から大きくずれていることに注目したい。この惑星はとても変わった軌道を作る。そもそも軌道傾斜角が大きく、楕円軌道の離心率も他と比べて大きく、相当に極端な扁平円を描く。その軌道一部は、海王星の軌道内に入る場合があるくらいだ。

 彼の異端児ぶりがよく分かる絵だと思う。

 因みに、彼が全天を1週することを肉眼で確認(観測)できる人間はいない。

 こういうシミュレーションをできるのがコンピュータのいいところ。

 

 0〜5H辺りに紫色の線が見える。これは土星だ。

 このプログラムを使えば、紀元前から、現在から数百年後までの惑星軌道を計算できる。暇潰しにもってこいだ。自分が生まれた日の惑星の位置だって分かる。

 因みに、ヒッパルコス星図データは最大12万個程度の恒星位置を持っているので、星図自体はもっと細かく表示させることは可能だ。

 しかし、色々とやってみたがMacの解像度では、3000個程度(6等星ぐらいまでの表示)が丁度良かった。2番目の画像がそれ。これ以上細かくしても何が何だかわからなかった。

 

 最後にもう一枚。

 今年のゴールデンウィーク中の惑星の軌道だ。4月28日〜5月6日までの9日間。

 よ〜く見ると火星がわずかに移動しているのが分かる。射手座と山羊座の間のところにいる。

 明け方4時ごろに南の空にいる。西には大きく木星が同時に見えるはずだ。

 

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 天気が良ければ久しぶりに望遠鏡を向けてみようと思う。

 明け方が気持ちいい季節だ。

 

MacでStella navigatorは走りません…