オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

小さいことの価値

 もう随分前のことになるが、ダイムラーベンツが新型の小型車を発表した際に一部のマニア、評論家から「小さいベンツはベンツではない」との評が囁かれた。

 確かにダイムラーの小型車開発、ダウンサイジングは当時の市場に驚きをもって受け止められた。

 ベンツとはショーファードリブン、運転手付きのステータス・カー、あるいはマフィア御用達のお下劣運転、品格なき高級車、とのイメージが当時の日本にはあった。

 昔からヤナセが右ハンドルのものを販売していたにもかかわらず、わざわざ左ハンドルを取り寄せてまで乗っているオーナーが多かったのも事実。

 皆、相当な見栄っ張りであった(僻んでませんから…)。

 そのような方々は、ベンツと言えば ”S” クラスのことを指すのであり、でかい=立派、大排気量=豪華、燃費悪い=贅沢の3点セットは当然の価値観、オーナーの誇りであった。

 よって、小型のベンツというのはこれまでの市場、マニア、ファンの常識を覆すものであり、価値観の破壊、大いなるパラダイムシフトであった。

 当時のVW Golfは、まだ”高級車”ではなかった。高級車のイメージはアウディが引っ張っていた(多分にマーケティングによるものであったが)。

 ベンツが発売した小型車は、190Eと呼ばれた。

 このベンツ初の小型車は、排気量2.0ℓでボディサイズも極めてコンパクトに作られており、所謂5ナンバーサイズに納まっていた。

 見た目はブルーバード/コロナよりは大きいが、クラウンよりは明らかに小さい。カムリよりやや小降りに見えた。

 「小さいベンツはベンツではない」との批評に対し、自動車評論家の徳大寺有恒氏はこう反論した。

 

 「何も知らないくせに偉そうなことを言わないで頂きたい」

 

 徳大寺氏は、実車に試乗した上でこのような趣旨の評論をした。

 「これはまぎれもなくメルセデスベンツである。ベンツの素晴らしさの全てを包含している。小型であるがベンツである」と。

 私の友人(Filio)は、中古のベンツに乗っていたことがあったが、彼はこう言っていた。

 「ゆずさん、ベンツの良さって10m走ってみたら実感できますよ。走っている感覚が他の車と全く違うんです」

 ダイムラーは小型車に限らず、自社の車の走りの部分に関しては、全くコストを惜しんでいなかったと思われる。

 そのような開発姿勢・ポリシーが徳大寺氏に「これは間違いなくベンツである」と言わしめさせたのであろう。

 190Eは、確かに小型であった。しかし、驚くような新技術も盛り込まれていた。

 その代表としてマルチリンクサスペンションが挙げられる。ダイムラーはこの凝ったサスペンションの開発に約10年を費やしたと言っている。

 またさりげない事であるが、この車、なんとフロントワイパーが1枚である。

 しかし、徳大寺氏曰く「払拭部はフロントガラスの大部分をカバーしている」とのこと。

 実は、このワイパー、アームが伸縮するようになっていた。

 伸び縮みしながら作動するのだ。なんともはや…

 と、言うわけで「小さい」=経済的、ではあるが必ずしも「チープ」とは限らない。

 大は小を兼ねるが「大きいことはいい事だ」が全ての価値観でもない、と私は考える。

 小さくたってチワワは犬だし、2.0ℓV6エンジンであってもフェラーリフェラーリだ。

 2ℓ4気筒、全長4.4mのベンツが存在したって構わないだろう。

 要は、小ささにどのような価値観を込めているかと言う事。設計思想の問題だ。

 戦艦大和と現代の護衛艦金剛(イージス)とでは、目的・役割が自ずと異なるというもの。

 どっちが優れているとも言えないし、比べることは野暮だ。

 

 さて、VWが新型POLOを発表した。

 私の自宅には、VWからPOLOを見に来い、とのDMが連日送られてきている。

 まだ、見ていない。

 スタイルはいいと思う。特にリアビューはGolfより良い!(好みであるが)

 エンジンは999cc、3気筒。ボア・ストロークは74.5×76.4なのでUP!と同じエンジンと思われる。

 これに、ターボ+インタークーラースーパーチャージャーではない)を付加している。

 パワー的には全く問題ないと想像できる(いや、相当パワフルだと思う)。燃費は19.1Km/ℓ(JC08)。これは信用していいと思う。

 ミッションは当然DCT。

 サイズは先代より少々大きくなっているようだ。

 先代は、全長がUP!より45cm程大きかった。現行は、先代+6.5cm(4060mm)。

 このサイズは、3代目Golfとほぼ同じ。だから、決して「小さ過ぎる」訳ではない。

 意外かもしれないが、Golfは2代目までは全長4mを切っていた。当時のフェリー料金では1ランク安価な部類に入っていたのだ。しかし十分に室内は広かった。

 POLOについても室内空間について問題はないと思う。

 些細な事であるが、インパネ内にカーナビ用のスペースが予め確保されていることは安心できる。現行Golfは当初カーナビは外付けしかできなかった。これはダメだ。ダメダメ。最低。

 

 UP!に乗り始めて約6年。

 そろそろ、次の車を考え始めているところだ。

 今、第一候補は、MINI。インプレッサは妻にダメ出しされた。

 Jimnyにも興味がある。

 しかし、新型POLOをみて心が動いた。これも良い。

 Beatleも捨てがたい。

 でも、結局Golfでいいとも思う。

 予算的なこともあるが今後10年乗るのであれば、大したことではない。

 悩む。

 5月連休中に「ヨコハマフリューリングスフェスト」に行こうと考えている(去年も行った)。そこでは、VW POLOの展示も行われるようだ(去年はGolfだった)。

 新型とは初対面となる。