「大局観(その1)」
隣人との痴話喧嘩が激しさを増している。
ニューヨーク町の町内会長にまで、心配され言動を諌められる始末だ。
「早いとこ謝っちまえ。いざという時は俺が助太刀して、一発殴り返してやるから」だって。向こうが悪いのに・・・。
こちらが一生懸命説明しようとしているのに、石投げて来て家の窓ガラスを何枚も割られたんだよ〜。こちらは、何とか話し合いでことを納めようとしているのに、「アッカンベ〜!」だって。
憎たらしいったら、ありゃしない。
うちのじいちゃんとの喧嘩をまだ恨んでいるんだって。一体、いつの話だよ。そんなこと、70年近く前のことだろう?原始人か。
あの頃は、町中で喧嘩をやっていて誰が誰を殴ったなんて、いちいち覚えていられないよ。それに、そのことは何回も謝ったし、お詫びの記しに用立てもやったろ?
えっ?それはおまえらの勝手な言い分?
そうかもね。
でも、とにかく、おめえの言ってることやってること理解できない。
これからも、そうやってず〜っと仲違いし続けるつもりか?あちこちから、文句言われてるんだぜ。「迷惑だ」、「周りの雰囲気が悪くなる」って。
今度、言ってやろ。
「冷静になれ」
「今後の商売を考えたら、ほどほど仲良くやっておくべきだろ?」
「あんた、よその町内会にもケチつけてるだろう?体がでかいからって、エラッそうなんだよ。評判悪いぞ」
「おまえの横暴を家族の誰も止めないからって、やり放題だな。いい加減にしろよ」
「おまえのものは俺のもの、俺のものは俺のもの、って一体何なんだよ!」
「俺たち、周りから見れば同類、所詮東の田舎住民なんだよ。いつまでもこの地域で痴話喧嘩してるわけにはいかないだろ。立派な人間になるんだ。周りとの上手な付き合い方を考えようぜ。」
「西側の連中が俺たちの喧嘩見て笑ってるぞ」
「一体どんな大局観もって近所付き合いやってるんだよ。昔のことは忘れて仲良くやろうぜ。昔の喧嘩のことなんて、俺は全く気にしていないから」
〜つづく〜