明け方に見える炎
この星の太陽からの平均距離は、2億2790万Km(1.5237天文単位;1天文単位は太陽〜地球間の距離)、公転周期:太陽を1周するのに必要な期間は687日(私たちの2倍弱)、自転周期24時間37分(ほぼ同じ)、赤道半径3396Km(地球の半分くらい)、質量は地球のおよそ10分の1。月は2つ。
太古よりその存在を人類に知られており、その印象的で妖麗な姿から「赤い惑星」と呼ばれている。
赤く見える理由は、その地表の大部分を占める砂漠が酸化鉄から出来ていることかららしい。
地球と同じように地軸が傾いていることから、四季があるとのこと。
これは、望遠鏡から見たときの惑星表面の模様が時をおって変化することから、ずっと以前から知られていることだ。
最近相次いで投入された探査機から送られてきた情報から、その実態はさらに明らかにされつつある。
以前から、標高が25000mを超す火山や、長さが3500Kmを超える峡谷の存在が指摘されていたが、最近では大気や水分の存在までが予測されている。
まさか、タコ型の生物が生息するとは思えないが、バクテリアレベルの生命体はひょっとしたら存在するのかもしれない。まさに興味津々・・・。
これが、火星だ。
"Mars"には、「軍神」との意味もあるらしい。
NASAは、スペースシャトル計画を終えて以降、次なる宇宙開発(探索)のターゲットを"火星"においている。
中国が月へのアプローチを明確に表明している今、USAは「Moon Base」ではなく、「火星への有人飛行」を指向している。
これは、アポロ計画を凌駕する遠大なる「夢」だ。
1960年代における「月着陸」は、当時では途方も無い計画であったが、現代における「火星移住計画」もそれに匹敵するインパクトと夢、ファンタジーを私たちに与える。
火星への有人飛行、火星移住は、私たちにとっては、まさに、夢のような話だ。
ほんとに、そんなことできるのか? ・・・と思ってしまう。
アポロ宇宙船は、3日間で月に到達した。
地球から月までは、およそ37万Km。火星までの平均距離は、7830万Km。最接近した時でおよそ7000万Km程度。単純計算で200倍だ。
惑星間航行は、必ずしも直線距離で行われる訳ではないので、単純に地球〜火星の移動に600日要するという訳ではない。
火星が地球に接近する(お互い緩やかな、異なる楕円軌道を回っているので、接近する機会がある!)時を狙ってロケットを打ち上げ、金星軌道のスイング・バイ航法を使うと220日程度で火星に到達できるそうだ。
220日。
これは、プラン実行に向けては現実的な数値だ。
しかしながら、帰路については相当面倒な事情があるらしい。
惑星軌道を利用したスイング・バイ航法は、何時でも何処でも使えるものではない。
地球までの帰還を考えた時、ある一定の惑星間距離が存在してこそ利用できるものだ。
その状況が整うまで火星に滞在し続けるか、それとも強大な推進力をもったロケットの自力で地球までの帰還を果たすのか・・・
これはトレードオフの関係にあるそうだ。
しかし、火星への有人飛行は「可能な範囲の限界内」には到達してるようだ。
NASAの壮大なるビジョンは、そのことを高らかに謳い宣言しているように思える。
今、明け方の西方に神々しく光る星が見える。
赤い・・・
これが、"火星"だ。
乙女座の中にいる。
朝起きて、空を見上げたら「真っ赤」な星が見える。
この状態で明け方に観測できるのは、春までのあと少しの間だ。
火星は美しい・・・