続・脆弱性を乗り越えて・・・
彼女「そこで、何をしているの?」
ゆず「何って、別になんでもない。この間、説明したPCのウィルス対策をしようと思って・・・」
彼女「そこ(PCの周辺)、私なりに片付けてあるから、さわらないで」
ゆず「・・・(これで、片付けてあるのかよ)」
彼女はノートPCをリビングに運んで言った。
彼女「何かしたいのであれば、ここでやって。私の部屋のものをいじらないで」
ゆず「別に、あなたのPCを使って何かをしたいわけじゃない。この間からやっている脆弱性対策の続きをやろうとしているだけだ」
彼女「治るの?」
ゆず「違う!壊れてはいない。脆弱性対策だ!この数日間、TVや新聞で報道されているだろう。その対策だよ!」
彼女「何の事?」
ゆず「TVや新聞を見ていないのか?アメリカ政府がIEの脆弱性と利用禁止を呼びかけたのを知らないのか?」(だいぶ、ムカムカして言っている)
彼女「そんなの知らない」
ゆず「・・・(ふざけんな!文句言うならパッチは自分当てろ)」
彼女「ともかく、やるのならそこでやって(リンビングのテーブルを指差して)」
ゆず「・・・(バカ野郎、何も分からんくせに文句言うな)」
彼女「私、そんなこと言われても訳わかんないから」
ゆず「・・・」
Windows update を行ってみると、IEのupdateプログラムはまだインストール候補に入っていなかった。
取り敢えず、PC環境はそのままにして、その場を後にした。
相当、気まずく、また腹立たしい気分だ。
新聞、TVであれほど報道されているのに、「知らない」だと・・・
家では、ほぼ一日中TVの電源は入っているのに、IEの脆弱性に関するニュースを彼女は、「知らない」「何を言っているのか分からない」と言った。
PCは、壊れてもいないし、別に何か不必要なことを所有者を押しのけて行おうとしているわけではない!
私はいたたまれない気分で、その場をあとにした。
・・・・
放っておく事にした。
別に、ウィルスに感染するとは限らない。
そのようなサイトに彼女がアクセスするとは限らない。
何か、PCを使って、特段重要なデータ交換をネットでやっている訳ではない。私も彼女も。万一があっても影響は限定的だ。
ウィルス感染を未然防止するためにとった行動であるが、そんなことよりも、彼女との間に出来てしまった、うまく説明できない ”隙間” のほうが、私にとってはよっぽど深刻だ。
しばらく、彼女とは口もききたくない。
だが、それは、お互い様だろう。
「自分のことは自分でやれ」
恐らく、彼女はそう受け取ったと思う。
しかし、現実論としてそんなことは無理だ。
でも、知ったことではない。
万一、ウィルス感染したら、有無を言わさずPCをクリアする。
それだけだ・・・。
今日、IE脆弱性対策として、マイクロソフトよりパッチが配信されたそうだ。
今回の騒動は、まもなく沈静化するだろう。
しかし、この事件を仕組んだクラッカーの「目的」は達成された。
多くの人達は「脆弱性」の意味は分からないし、それがOSに存在しようが、IEにあろうが、そんなことは大した問題ではない。
一番怖いのは、「問題の本質」が理解されていないこと、そして、多くの人々は「ウィルス」の本質を知らない事だ。
私と彼女の間には、「軋轢」が生まれている。
私にとっては、銀行のオンラインシステムが停止することよりも重要な事件だ。
クラッカーは、意図したかは知らないが、「社会を混乱させる」ことには成功した。
そして、希薄な関係性に依存した人間関係の破壊にも成功したのかもしれない。