オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

ゴジラ再び

 今、NHK BSプレミアムで「ゴジラ」を特集している。

 恐らく、ハリウッド版ゴジラの公開にあわせてのキャンペーン企画とは思うが、昭和のゴジラファンとしてはありがたいことだ。

 現段階で、1954年版の初代ゴジラと84年版ゴジラの2本が放映済みだ。今後、ゴジラVSモスラ(昭和版)、ゴジラVSデストロイヤー等も放映されるとの事。

 これを機会に、コレクトしておこっと。

 

 54年版は記念すべき初代作品であるが、デジタルリマスターされている。

 これは、視聴して正直、驚いた。

 非常に鮮明な画像になっている。白黒作品であるが、画面のノイズは全くと言っていいほど見られない。まさにゴジラが復活している。

 テラスモール湘南のシアターでは、このリマスター版がハリウッド版ゴジラに先駆けて上映されるそうだが、ファンであれば見る価値はあると思う。劇場で見れば、相当な迫力があると推測する。

 また、改めて見てみるとストーリーも真剣そのものだ。実に真面目に制作されている。

 ゴジラの襲撃を受けた後の廃墟の映像は、空襲を受けた後の東京や被爆後の広島を強く意識させられる。

 ゴジラを倒すオキシジェンデストロイヤーを開発する研究者は、独眼竜であるが、これは戦争で負った傷という設定になっている。

 登場する人物は、皆、心に戦争の傷跡を持っているかのようだ。

 戦争終結から、まだそう遠くない時代にこの作品が制作された事がよく理解出来る。

 この映画が海外の新進気鋭のクリエーター達から再評価されている事実・理由は、私達日本人にとっても改めて考えてみるべき価値があるだろう。

 

 84年版ゴジラは、作品を貫くコンセプトが見事に踏襲されている。

 作品の隅々に新しい仕掛けや見せ方が散りばめられており、新たな手法で現代ゴジラ像を具現化したものと言える。

 日本人の思考から「戦後」を取り除いた価値観で制作したものであり、これはこれで良いと思う。

 私の子供達に「ゴジラ」の意味を理解してもらうのであれば、84年版で十分だ。

 この現代版ゴジラは、原子力発電所を襲い「圧力容器」の中身を吸い取る。核物質を食べる。

 そして、映画の冒頭では、ゴジラに付着していたフナムシが、その放射線を浴びて巨大化して人間を襲うシーンがある。

 放射線を浴びると「とんでもないことになる」「巨大化/怪物化」する、との都市伝説は、この映画が作り出したものかもしれない。

 先日、京都の鴨川オオサンショウウオが見られたらしいが、これを「オタマジャクシが放射線を浴びて巨大化した」とツイッターで呟いた人がいて袋叩きにあっていた。

 この人が、大衆から常識の無さを嘲笑されるのはやむを得ないが、その浅はかな知識にもバックボーンがある。本人は、根拠あって発言したつもりなのだ。

 ゴジラ映画が日本人に与えたメンタリティは、小さくはないのかもしれない。

 

 昭和のゴジラシリーズは、何故か彼の「息子」が出てきたり怪獣なのに「シェー」をしたりと、必ずしもシリアスな内容ばかりでは無かった。

 彼は、作品によっては悪い怪獣達(キングギドラ)と戦ったこともあり、一時「正義の味方」であったり「アイドル」だったのだ。

 圧力容器を食べる彼と、息子とともに3本の首を持つキンキラキンの怪獣と戦う彼のどちらが本物なのか、どちらがより彼に相応しいのかは、今後の世代が決めてくれる。

 

 ハリウッド版ゴジラの初代作は、決して良い評判ではなかった。

 ジャン・レノがフランス政府の密命を受けた重要人物として登場する。彼は主人公(USAの人)に言う。

 「母国の誤りを償いたい」

 ここでもオリジナルのコンセプトは守られている。

 新作の監督は、54年版ゴジラを「リスペクトしている」と発言している。

 

 「ゴジラ」は日本人だけのものではなくなった・・・