優しい税金は存在しない
昨日(11/21)、国会が解散された。
万歳三唱のタイミングを間違えるという、代議士としてあるまじき失態があったようであるが、それも今の先生方の品格・品性・知性を示しているようで、興味深い。
衆議院議長は「党で、ちゃんと教えておけよ」と言ったとか。笑える…
さて、連立与党間では選挙戦の政権公約として「軽減税率」の導入が合意されたとの報道があった。
これは、いかにも公明党らしい政策だ。
保守政治の王道を自負する自民党からは、この発想は得難いと思う。
特定品目の税率を軽減し、低所得者への配慮を行おうというものだ。消費税の特性である「逆進性」への対策ということであろう。
一定所得者層への還付金交付という案もあったようであるが、事務処理が煩雑であり、こちらに落ち着いたようだ。
しかし、この政策、矛盾している。
そもそも逆進性を言い始めたら、一般売上税とも言える消費税を適用する事自身がおかしいのだ。
税収を安定的に確保したい、そのためには広く、薄く課税する、消費税の目的・メリットはこの点に尽きる。
広く課税するからこそ、安定的な税収が得られるのだ。
共産党が主張する「金持ちから取れ」も、心情的には分からんでもないが、世の中の金持ちはそれほど数多く生息している訳では無い。
国税庁の発表しているデータによれば、平成25年度の平均給与所得は413.6万円(対象4,645.4万人)。源泉徴収額は8兆7160億円。
この中で、1000万円以上の人は全体の3.9%。約180万人。
2000万以上の人は0.4%。18万人くらい。この所得層は大企業の役員・社長クラスだ。
世間一般には、役員・社長はお金持ちであろう。しかし、この程度しか存在しないのだ。
この人達が納めた所得税の実績は、1兆7920億円。全体の20%程度。消費税1%弱相当。
1000万円〜2000万円までの人達は、2兆2668億円。全体の26%。
つまり、現段階では、4%程度の人達が46%の所得税を負担しているのだ。
「お金持ちと小金持ち」が所得税を支えていると言える。
直接税は、累進課税となっているので、現段階でも高所得・高負担であると言える。
この歪さを是正するのが「消費税」に他ならない。
一定所得層への負担を考慮するのであれば、大型間接税はなじまない。そもそもが矛盾なのだ。
軽減税率を食品に適用すると、およそ1兆3200億円の減収となるそうだ。
これを一体、どのようにして補うつもりなのだろうか?
法人税の引き下げ方針は決定済みであるので、所得税引き上げを検討せざるを得ないと思うが、果たしてこれ以上の高負担を提案出来るだろうか。
配偶者控除を廃止すると6000億円程度の増収が見込めるとも聞く。
政府が「女性の社会進出」をキーワードに活発な論議を誘発しようとしている意図はこの辺りにあるかも知れない。専業主婦が社会進出しようが、しまいが、配偶者控除を廃止すれば自動的に税収は増えるし、彼女らが本当に働きに出れば、そこから所得税を徴収出来る。一石二鳥。
政府・与党は、勝手な理屈を述べているが、所詮「人に優しい税制」など存在しない。
一体、誰からどれほど徴収すれば、公平であり納得性が高いというのであろうか?
そんなこと、誰にも分からない。
映画「アルマゲドン」の1シーン。
地球を救うために隕石に着陸し穴を掘る仕事を引き受けたハリーとその部下達はNASAに対し色々な労働条件を要求する。
ホワイトハウスでの1ヵ月滞在や駐車違反の免赦、8トラックテープの復活などさまざまだ。その中に、メンバ全員が一致した要求があった。
「税金を払いたくない。一生・・・」
「払う意義は何なのか」
ここにも、重大な論点があると思う。