Good by Mr.SPOCK
ジーン・ロッデンベリー(GENE RODENBERRY)が、STARTREKの企画書を書いたのは1964年3月。後に伝説となるTV番組のあらましは、たった16枚の紙に纏められていたらしい。
その後、2本のパイロット版が制作され、1966年9月8日、記念すべき第一作「惑星M113の吸血獣」がNBCで放映される。
放映終了は69年6月3日。
STARTREKは、3年間で、全3シーズン、79のエピソードが放映された。
日本では、1966年10月には早くも月刊「SFマガジン」で紹介されているらしい。
日本にSTARTREKを持ち込んだのは「東北新社」。「サンダーバード」を配給していた番組制作会社と言えば、多くの方はその存在を再認識するであろう。
USA初放送から約3年後、69年4月27日(日)午後4時、日本TV系列でSTARTREKの放映は開始された。
日本における番組タイトルは何故か「宇宙大作戦」。
「・・・」
何が大作戦であるのか、今に至っても全く不明だ。
STARTREKというタイトルは、宇宙を飛び回る、惑星を渡り歩く、とのドラマ・イメージを彷彿させるが、それが「作戦」に読替えられてしまうと連想するものが本来の内容と全く異なってくる。本来とは違ったドラマのイメージをもってしまう。
何故、そのような(センスの無い)ネーミングをしたのかは謎だ。
ただ、この当時はUSA名「Mission Impossible」を「スパイ大作戦」と言っていた。
円谷プロ制作のウルトラマン後番組にも「怪奇大作戦」との珍妙な番組名が与えられていたことから、恐らくその当時、業界の流行であったのかもしれない。
パッとしない番組名も祟って、日本でSTARTREKは全くと言っていいほど注目されなかった。
「宇宙大作戦?そんな、子供向けのものなど…」
「原潜シービュー号、海底科学作戦」などを見たことのある大人達は、「作戦」というタイトル名から、そう連想したのではないだろうか。
ただ…、私は見ていた。「宇宙大作戦」を。「原潜シービュー号」も(こちらは全くもってちゃっちい)…
しかし、当時の私にはこのドラマの意味・意義・価値が分からなかった。理解出来なかった。
やむを得ないと、今は思っている。
だって、子供だったから。
子供に、この深遠なドラマを理解せよ、と言うのは無理筋だ。
それにしても、あの宇宙船のデザインは斬新だった。ペンシル型のロケットや円盤型の宇宙船がSFの主流であった頃、NCC-1701 Enterprizeのデザインは奇抜かつ斬新、先鋭的で、他のどのドラマに出てくる宇宙戦艦よりも未来的であった。
あの宇宙船のイメージは一度見れば絶対忘れることは無い。
そして、あの長身の短髪で耳の尖ったクルーのことも…
科学主任であり、副長。宇宙人(地球人ではないということ)。
「船長、それは非論理的です」
彼がしばしば発するセリフは、私の脳内の奥深くに刷り込まれた。
高校生になった頃、STARTREKが映画化される、との噂を聞いた。
絶対、見に行きたいと思った。しかし、一緒に見に行ってくれる友達がいるかは定かでは無かった。
映画タイトルは「宇宙大作戦 THE MOVIE」ではなく、ちゃんと「STARTREK」になっていた。
「耳の尖った宇宙人が出てくるSF映画を一緒に見に行かないか?」という、恥ずかしく、くだらない誘い文句は、結局、発する必要が無かった。
私が在籍するバレー部の友人の多くは、驚くことにSTARTREKを知っていた。
そして「皆で一緒に見に行こう」ということになったのだ。
私は、一人ではなかった。
トレッカーは、他にもいた。
大学生の頃、NASAがSPACE SHUTTLEの試作機をジャンボジェットの背中に乗せ、試験飛行を行った。
親ガメの背中に乗る子ガメのように見えたオービターは、とても愛らしかったが、彼女にはEnterprizeというチャーミングな名前が付けられていた。
この名は、USAを中心とする多くのトレッカー達(STARTREKのファン)がNASAに働きかけたことにより実現したそうだ。いや、NASAの職員の多くがSTARTREKのファンだったとも聞く。
子供の頃、STARTREKを見て育った子供達が、SPACE SHUTTLEを宇宙に飛ばしていたのだった。USAの懐の深さに驚嘆するしか無かった。
バブルの頃には、「新STARTREK」なるものが輸入された。
私がこのTVシリーズを見たのは、これよりかなり後だ。
最初は、子供の頃見たSTARTREK(TOS)のイメージがあまりに強烈だったため、正直、新作には違和感を覚えたものであるが、最終的には本作品の大ファンになった。
全7シーズン、176話にわたる大河ドラマである。
TOSを見て育ったUSAのクリエーター達の情熱を、余す所無く表現しきった最高のTV番組の一つと言って良い。
耳の尖った科学士官は、このシリーズにゲストとして出演している。
この新STARTREKは、俗に「NEXT GENERATION」(TNG)と呼ばれている。
TNGは、1994年には映画化される。映画制作はその後も継続し、計4本が制作された。
余談であるが、SPACE SHUTTLEに乗船するクルー達は、毎朝、各自が持ち込んだBGMで目覚めることになっているらしい。日本人初の女性宇宙飛行士向井千秋さんがセレクトしたのはTNGのオープニング曲だった。
今もSTARTREKは制作されている。
USAのクリエイター達が、夢を繋いでいるのだ。あれから、もう50年以上が経っているというのに…
恐らく、USAの子供達の夢を乗せて、これからもEnterprizeは飛び続けるのだと思う。
とても素晴らしいことだ。羨ましい。
Enterprizeには、未来永劫、飛び続けてほしい。
LEONARD NIMOY…、Mr.SPOCKの魂を乗せて。
いつまでも…