オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

天文学入門

 私の世代は、子供の頃、米ソ冷戦時代の宇宙開発競争のただ中にいたこともあり、比較的、宇宙に関心が深い人が多いと思っている。

 アポロ11号の月着陸をTV LIVEで見たり、その翌年の大阪万博で「月の石」を何時間も待って見学したりした世代だ。

 小学館の月刊誌は毎月購読していたが、アポロ計画については、しばしば特集が組まれていたと思う。この時代の子供の重要関心事と言えば例えば、

プロ野球

・怪獣

・宇宙開発

 であったと思う。

 私は、太陽系が9個の惑星で構成されていること、彗星が太陽系の外からやってくること、アンドロメダが銀河系外にあること、宇宙には銀河が数多く存在すること、等はあちこちの本を読んで相当前から知っていた。

 最近、オリオン星団のベテルギウスが不安定で破裂するのではないか、という噂を聞くことがあるが、私にとっては、それは何百光年も彼方にあること、主系列ではなく赤色巨星で太陽の何百倍もの大きさを持つこと、やがて膨張の果てに死を迎えること、等は小学校の低学年の頃の知識だ。

 そんな、天文大好きだった私は、小学生の時、1冊の本と出会っている。

 「ライフ・ネイチュア・ライブラリ 宇宙」 

 それまで、私が子供向け雑誌から得ていた断片的な天文・宇宙に関する知識を、飛躍的に拡大させ、体系的に整理してくれた書物だ。

 

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 コペルニクスケプラー、ティコ・ブラーエ、ガリレオから、ニュートンハーシェルまでの功績は、巻頭に記述されている。天文学の歴史の概略は、ここを読むだけで十分に理解出来る。

 

 太陽系の成り立ち、銀河系の構成も触れている。

 子供であった私が驚いたのは、星には誕生と死があると知ったこと。太陽もやがて死を迎える、ただし40億年後、と知って、私は大層不思議な気分になった記憶がある。

 何よりも、宇宙には太陽よりも大きな恒星が数えきれないくらいあると言われてショックだった。それまで、世の中で一番大きなものは太陽だと思い込んでいたから。

 

 この本は、最後に銀河の彼方にある島宇宙の解説を行い、やがて、空間・時間と宇宙の関係性について述べ、エピローグとしている。

 宇宙の果ては、私達がいる空間の極限であり、150億年という悠久の時間を遡った先端にあることを示唆していた。

 これには、心底、驚いた。

 昔の人達も、恐らく地動説や膨張宇宙論を初めて聞いた時にはこのような気分であっただろう。

 これまで、天文に関する本は何冊も読んだが、人生に影響を与えた1冊を選ぶとすれば、私はこれだ。

 この本の初版は、1962年らしい。当然、廃盤。

 

 さて、今、子供たちに天文学の入門書を選ぶとすれば何が良いだろう?

 私は「銀河宇宙オデッセイ」(NHK)を勧める。全9巻。

 少し前の本であるが、その分、古書なら値段も安く入手出来る。

 内容的には、全く陳腐化することはないし、素粒子理論についても、しっかりと言及している。

 

 「宇宙のことを憶えば、人の悩みなど取るに足らないこと」とは思わない。

 それと、”これ” は別だ。

 しかし、天文学を少しでも知っている人は「常識」や「前例」が絶対的なものであるとは思わないであろうし、そもそもこの世の中に「絶対的なもの」など存在しないことが、「常識」であることを知ってる。

 色即是空 空即是色…と仏典も教えている。

 天文学をやっていれば、原理主義に陥ることはないであろうし、そういう点で、少なくとも人としての道を踏み外すことは無いのではないか、

 …と思っている。