「水と土」を使ったテロ
ドローンを使って首相官邸の屋上にプレゼントをおいた者が逮捕された。
罪状は、威力業務妨害。
日頃、官邸につめている者達の如何なる業務に支障がでたのか不明であるが、誰もが思うようにこの罪名は「こじつけ」だ。
逮捕されたこの男。「反原発の意思表示」のため行為に至ったとのこと。
「何をバカな」と思うのであるが、よくよく冷静に考えてみるとこの男の振る舞いには「痛快」な面がいくつかある。
ひとつは、厳重な警備がなされているはずの首相官邸の屋上に(こっそりと)ただ単に土と水の入った箱をおいたこと。
ここは、極めて秘匿性の高い場所ではないことは既に証明されている。
何故なら、警備当局が箱がおかれたこと自体に長期間、気が付かなかったからだ。屋上への警備の立ち入り実績も、相当以前であると伝えられている。
つまり、官邸の常識で捉えれば、屋上は鳩や雀くらいしか訪れない何でもない場所であることを被害の当事者自身が認めてしまっている、という事実。
そのような場所に、箱を1つ置いたことが大罪になる訳が無い。
誰も立ち入らない場所に、箱を一つ置いたら「威力業務妨害」とは、ちゃんちゃら笑わせる。
「何か不都合でもありましたか?」というレベルだ。
完全に警備当局を小馬鹿にしている。痛快。
そしてもうひとつ、これは重大なことであるが、彼は屋上にとある地域の「水と土」を箱に入れておいただけだ。
箱書きには、「XXX」とやら書いてあったそうだが、それ自体は問題ではない。
例えば箱書きには、「恐竜の卵」と書いてあっても「宇宙人の死体」と書いてあって構わない。そのようなもの、誰も信用しないであろう。
では、たまたま「放射性廃棄物」らしきイメージの記述があったらどうだというのだ。
「冗談ではすまない」となるのか?いや、そのようなもの、一般人には入手できない。「放射性廃棄物」を使ったテロなど、簡単には起こせない。箱書きの信憑性など、「宇宙人のXX」と対して差はない。
そして、何度も言うが、事実として、箱の中身は単なる水と土だ。超兵器を箱に入れていた訳ではない。
当事者が「何か、不都合ありましたか?」と、居直ったら、それを咎めることができるのか?
そこで内閣官房長官の発言である。
「テロ行為に等しい」
おそらく、菅官房長官は発言を後悔していると思う。
何故なら、箱の中身は「福島の水と土」であったからだ。
総理大臣のお家に「福島の水と土」を届けたら「テロ」に匹敵する、と官房長官が言ってしまったということだ。
何故、そのようなものが「テロ」に使えるのか?
いつから、「福島の水と土」はテロ兵器に指定されたのだ。そんなに危険なものなのか?
さらに言えば、「健康に直ちに重大な影響を与えるレベルではない」水と土に、政府は、一体何を騒いでいるのだ。そう言ったのは当の政府だろうに。
この事件の背景、経緯は、当局によりいずれ明らかにされることだろう。
しかし、本日の段階で、私は逮捕された男のこの皮肉たっぷりの振る舞いに、若干のシンパシィを感じている。
本人が計算ずくでこの行為に及んだのかは不明であるが、エスプリが効き過ぎている。皮肉たっぷりだ。
そして、この男の罪は、恐らく全く深くない。
彼の弁護士は恐らく法定でこう弁護するだろう。
「総理大臣官邸に福島の水と土を置いたら、いかなる罪に相当するというのですか?京都の水と土なら不問なのですか?」
「箱の中身が福島の水と土ではなく、ゴジラのソフビ人形であったら、罪状はどう変わると言うのですか?」
「被告人が起こした罪は、行政の本音を燻り出したことでしょうか?不都合な本音を白日のもとに晒したことが罪ですか?」
家主が不在の間に起きた事件(事案?)であるが、番頭が納め方を誤ったことだけは間違いない。
不謹慎と思われるかも知れないが、やはり「痛快」であった。