オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

宙の帽子

 赤経 12h34m59.4s

 赤緯 -11°37'23″

 地球からの距離、およそ2800万光年。

 ここに帽子の形をした銀河が横たわる。その名を「ソンブレロ銀河」という。

 NGC番号は4594、乙女座に位置し視直径はおそよ8'.7×3'.5、明るさは9.0等級。

 かなり暗く小さいが、市販の望遠鏡でも何とか捉えることが出来るらしい。

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 この銀河は、メシエのオリジナルカタログには記載されていないとのこと。1921年になってからメシエカタログにM104として追加された。

 実は、遡ること遥か1781年にメシャンがこの銀河を発見しており、ハーシェルも1784年に「ハーシェル天体」として自らの観測結果を記録している。何故か、メシエ以外の天文学者からは以前から認知されていたということになる。

 

 この銀河の風貌は幻想的である。

 その形がメキシコの方が良く被っている帽子に似ていることからこの名称がついている。

 はっきりとした円盤型の銀河を真横から見ている訳だが、円盤の周囲にはっきりとしたした黒ぶちが見える。これは、暗黒星雲らしい。

 銀河の直径はおそよ5万光年。太陽8000億個に相当する質量を有する。

 25cm口径の望遠鏡を使うと、全体形状、黒ぶちも肉眼で観測出来るそうだ。

 また、銀河の中心部には太陽10億個分の規模のブラックホールがあると噂されている。

 私は子供の頃、M104の写真を見て、天空の果てに浮かぶ銀河をどうしてもこの目で確かめたくなった。

 恐らく、多くの方がそうであると思うが、一度でも「土星」を望遠鏡で見るとその虜になる。そして、土星ほど簡単には直視出来ないが、写真で見ただけで同様にその姿に惹かれるであろう最有力の星雲・銀河のひとつが「ソンブレロ」であると確信する。

 本当に何とも幻想的な姿である。

 このようなものが遥か2800万光年も先に存在するのだ。

 因に、我が銀河系の直径は10万光年と言われている。

 とてもじゃないが、ソンブレロまでは行けそうにない…

 近年の科学技術の発展により、この銀河の詳細な姿が明らかになりつつある。

 これは、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたM104の姿だ。

 

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 随分とこれまでとは印象が違う。

 鍋型銀河ではない…

 お皿型銀河だ。

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 しかし、何とも美しい…

 この銀河は乙女座にある。

 

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 女神様の左手の肘の下辺りに位置する。

 乙女座は全天で2番目に大きい星座と言われているが、南中した際もあまり高く上がらない。 都会では観測しづらい星座と言って良い。

 私も、自分の部屋から乙女座を見ることはほぼ無理だ。だから、ソンブレロも実際に見たことは無い。

 この銀河を見ることは、未だ私の夢・願望の一つとして残っている。

 実際には、さして困難なことではないが、それでも未到達の「夢」として残っている。

 

 さて、どこで、どのような望遠鏡をつかってこの銀河を見てみようか…