それでも労働組合があったほうが良い理由
質問です。
あなたの会社に労働組合はありますか?
そうではない場合、あなたの会社に労使委員会はありますか?
そうではない場合、あなたの会社に社員会/従業員会はありますか?
質問の意味が理解できない人、あなたの会社の従業員を代表するのは誰だか知ってますか?
あなたの会社に労働協約は存在しますか?
あなたは、入社時、労働契約書に押印しているはずですが、その際、就業規則をちゃんと読んでいますか?(”就業規則を遵守します”との契約書に押印している)
以上の質問に”YES”と答えられなかった人、「高プロ」が導入されるとあなたを守ってくれる第3者、組織はありません。ヤバイです。
あなたは、経営者に搾取されやすい環境にいると言える。
逆に言うと、「高プロ」が導入されても、上記の組織が存在・機能していれば、365日働かせ放題の制度が会社に導入されることはまず無い。
理由は、組合が協定書に押印しないから。これは従業員会も然り。
労働組合の中には、一部「御用組合」などと揶揄される組織もあるようだが、そうでなければ常識的に考えて労働組合が何の前提条件・制約(性悪説に基づく)を設けず、この法案に従った就業規則を受け入れることは、まずあり得ない。
この国には、所謂「サービス残業」という苦役・美德が蔓延している。例え経営者がそれを推奨していなくとも、現場ではそれが横行している。
その悪しき慣行を打ち壊すために日々活動する労働組合が、こんな筋の悪い制度を導入する動機はそもそも皆無。
誰の得にもならない。もちろん、経営者側にもだ。
良心を有する真っ当な経営者は、こんな制度を必要としない。
これを活用するのは、「名ばかり店長」や「ワンオペ」、「優秀な社員以外いらないチーム作り」を社員に強いる独善的企業経営者だ。
労使の合意があれば、現制度の中でもスーパー裁量労働は可能だ。では何故、法改正してまで?
「高プロ」を導入したい企業の狙いは一つ。
時間外労働の深夜割増、休日労働割増を削ることだ。
なんてセコイ。
こんなもん、最重要法案として取り扱う内閣のアホさについてはもう言及しない。
因みに、経団連のジジイ達は自分の会社で労働者搾取をしたいから、この法案を念願しているのでは無い。
経団連の理事を排出するような企業には、既に歴史と伝統を持つ立派な労働組合が存在する。
一方、経団連会長を輩出する企業ともなると、そこの労働組合は労働界での指標ともなるべき行動・運動が求められる。
「高プロ」なんぞ、"そのまま" 受け入れるわけがないし、そもそも、経営者団体のトップを出すような企業は、就業規則・労働条件も先進的だ(給与が高いことを意味しているのではない)。
こんな出来損ないの制度は不要。
では一体誰のための制度なのか?
「高プロ」のターゲットは、巨大企業ではない。大・中規模の企業だ。
労働組合が未組織であるところの。
社員・労働者の代表を明確に示せない企業においては、この制度は殺人的な労働環境を生み出し得る。別に経営者がそこまで確信犯でなくても。
サビ残はもとより、退職すら許されないブラック会社の話など、いまの日本ではいくらでも聞くことができるご時世だ。
「御用」であれば論外であるが、やはり労働組合はあった方が良い。
何故なら、戦後作られた労働3法は、労働組合の組織化が前提であるからだ。
労働基準法を読むと「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし〜」との表現が頻繁に出てくる。
これは労働法が、労使の価値観のバランスを取ることを期待して作られていることを示している。
若い世代は、労働組合に拒否感があるかもしれない。
それは、それで理解できる。
しかし、今般、政府があのような支離滅裂な説明の元、凄まじい労働強化につながり得る出来損ない法案を強要してくるのであれば、現行社会においてそれに対抗できる最後の砦は労働組合だ。
今一度、その存在価値、理由を皆で考えて見るべき時がきてしまった。
現政権を支持するのは結構。勝手だ。
しかし、自分の身は自分で守る術を知らないと後悔することになる。
何故、労働組合が政治に首を突っ込むのか、連合の存在理由は何か、旧民主党の支持組織と活動限界の関連とはなんであったのか等、今一度考えて見る必要がある。
働く者にとって、思考停止が許されない事態が迫っている。
しかし、だ。
2017年度中小企業白書によると国内企業数はおよそ382万社。その中で労働組合としてカウントされているものは24,465組合(厚生労働省調べ)。組合員数にして998万人。
設立割合を企業数から単純計算すると0.6%。
ほとんどの会社に労働組合は存在しない。
最後に、労働基準法の冒頭を引用する。
第一章 総則
法律は最低を定めている。
では、「あるべき水準」は?
それを作るのは私たち自身だ。
傍観が何かを創造することはあり得ない。
デモを揶揄するものが実は最も愚かなのだ。
今、できることをやるべきなのだ。
※(補足)
使用者は就業規則改定にあたり、その内容について労働組合、従業員会と協定書を締結する。その合意なく、一方的に就業規則改定を行うことは事実上不可能である(労使紛争が起きる)。新たな勤務制度を導入する際は、協定書にその対象者を明記する必要がある(ex.職種・職位・担当業務・所属等)。