オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

ロマンスカーの想い出

 もう遥か以前のこと。

 若い頃は週末になると友人たちと毎週のように新宿に繰り出し飲んでいた。

 移動の手段としては、JRで横浜まで出てそこからは東横線で渋谷に行き、その後は山手線で新宿に出るというルート。面倒であったが仕方がなかった。

 その際、小田急の側で目立って赤い車両を見ることがあった。

 「なんだろう、あの車両…」

 とても気になっていた。

 その車両、とてもカッコいいのだ。

 その後、とある女性友達ができた。

 彼女は、小田急線の某所から新宿まで通勤していた。

 彼女と話すうちに小田急には「ロマンスカー」と呼ばれる特急列車があることを知った。

 「あの車両だ!」

 私はあっという間にこの車両のファンになった。そして、彼女の話を聞くうちにどうしても乗って見たくなった(彼女は当然乗ったことがある)。

 しかし、若干の問題がある。

 乗る理由だ…

 当たり前であるが、この列車は新宿〜箱根間を走る特急列車である。

 当時私の住む場所から一番近い停車駅は町田だった。

 しかし、町田〜箱根をロマンスカーで移動というのも、如何にも取って付けた感があり、乗車する強い動機には至らなかった。

 あっという間に目的地に到着してしまうから…

 

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 ↑ 小田急HPより

 

 

 私はある日、新宿通勤の彼女にその話をしてみた。

 「ロマンスカーに乗ってみたいのだけど、乗る機会がないんだよね。町田から乗ってもあっと言う間に箱根だよね。それじゃあなぁ〜」

 「新宿から乗ってみる?一緒に乗ってあげるよ」

 「えっ、新宿までわざわざ出る?」

 「そう、出るの」

 「新宿から箱根まで行った後は?」

 「そのまま帰ってくる」

 「え〜!」

 「乗るならそれしかないでしょ。ロマンスカーは特別。」

 「せめて、箱根に泊まれないもんかね」

 「えっ、私困る…処女だし。」

 「そうだよな(別に聞いてないぞ…)。」

 

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 ↑ 小田急HPより

 

 彼女とは、そんな会話を夏の頃にしていた。

 秋になると彼女が言った。

 「箱根のロマンスカー、泊まりでもいいよ。そろそろ紅葉の季節だし箱根は良いよね」

 彼女は自宅住まいだ。

 「両親には何て言うの?」

 「まあ、適当に。ただし、泊まる部屋は別だよ」

 「了解」

 

 こうして私の念願であったロマンスカーの新宿〜箱根往復の旅は実現した。23歳の時の話。

 ロマンスカーの旅は素晴らしかった。

 当時は、ネイビーのワンピースを着た色っぽいお姉さんがワゴンを押しながら車内販売をやっていた記憶がある。

 

 ロマンスカーの最前列に一度座ってみたいと思っていたが、それは10年後に実現した。

 向ヶ丘遊園に息子を連れてウルトラマンショーを見に行く際に、最前列のシートが予約できた。

 あれは素晴らしい景色だった。

 私が大好きだった車両は、今年でラストランを迎えたとのこと。

 きっと、これまで多くの人たちの夢を乗せて走っていたのだと思う。

 ありがとう、LSE