オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

口語体労働基準法

 最近のブラック企業、ブラック労働、ブラック上司に関する話題が酷すぎる。幾ら何でも目に余るものがある。
 経営者・管理者・上司、当事者が、行為そのものが法律に抵触していることに気付いていないのではないか、と思われるケースも散見する。
 そこで「労働基準法」の主要項目を改めて紹介することにした。
 文書だけでなく、法律の趣旨、労使に求める理念についても、私の経験を踏まえ記述させて頂いた。
 私は法律の専門家ではないので、あくまで私見となるが、起きているトラブル・状況を整理する上での参考にしてほしい。
 そして、今、困っている人がいるのであれば、必要な行政機関(労働基準監督署)、団体(労働組合等)を通じて、是非改善を図ってほしい。
 
・この法律で定める労働条件の基準は最低限のもの。経営者と労働者はその向上を図るように努めること。
・労働条件は、労働者と管理職が、対等の立場において決定すること。管理者が立場を利用して労働者に一方的に不利な条件を作ってはならない。
・使用者は、労働者の国籍、信条を理由に賃金、労働時間、その他条件について、差別的取扱をしてはならない。
・女性であることを理由に男女間に賃金格差をつけてはならない。
・使用者は、暴行、脅迫、威圧、脅し、監禁等により心身を拘束し、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
・中間搾取(ピンハネ)は禁止。
・労働者が勤務時間中に選挙に行きたいと申し出た場合、管理職は黙って行かせること。公職(例えば議員活動)の活動は行わせること。
 
・「労働者」とは、会社で働き賃金をもらう人のこと。
・「使用者」とは、社長だけでなく指揮・命令権を持った管理職全体を指す。不当労働行為で罰せられるのは経営会議メンバーだけではないよ。課長や主任、支店長であっても、場合によっては罰則の対象者になり得る。
・賃金とは、賃金、給料、手当、賞与は当たり前として、労働対価として支払われる全てのものを指す。
 
・やむを得ず働けなかった時間分は、賃金は支払われないよ(ノーワーク・ノーペイの原則と言います)。
 
・この法律で定める基準に達しない労働条件を使用者が勝手に決めても無効。だって、さっき「これは最低限の基準だ」って言ったじゃん。
 
・使用者は、労働者を雇う際は、賃金・労働時間等の条件を文書で明示すること。労働者は、明示された労働条件が事実と違う場合は、今すぐ、予告せず、勝手に会社を辞めることができる。その時、就職のため田舎から出てきた人が帰郷するための電車賃は会社が払うこと。
 
・使用者は、仕事の失敗や業務放棄に関して、予め罰金や損害賠償請求を課す契約は禁止。賃金の前借りを条件に強制労働させたり、ペナルティを名目に賃金から差し引くことも禁止。
・給与天引きを使っての強制預金は禁止。
・給与天引きで財形貯蓄や社内預金を行う場合は、組合と協定書を結んで労働基準監督署に届け出ること。 
 
・使用者は、労働者をクビにする場合は、1ヶ月前に本人に通告すること。一方的にクビにはできません。のっぴきならない理由で今日クビにする場合は、1ヶ月分の賃金を支払うこと。
  
・会社を辞める人が転職のため各種証明書を欲しいと言った場合は、すぐに発行すること。必要書類を出さないことで転職を妨げるようなセコイ行為は禁止。
 
・ 使用者は、労働者が退職した場合、1週間以内に未払い分の賃金を支払うこと。これを渋ったりしないこと。
・賃金は現金で払うこと。現物払いは禁止。給料日は毎月1回以上とする。給与天引きは、その内容を組合と協定すること。
・会社の勝手な都合で事業所を閉鎖している場合は、賃金の60%を支払うこと。これ、休業手当と言います。
 
・管理職は、社員を1週間に40時間を超えて働かせてはならない。1日当たりでは8時間を超えての労働は禁止です。
・残業させる場合が存在するのであれば、事前に労働組合との36協定の締結と労働基準監督所への届け出が必要です。ここ大事。
 
・1日8時間労働の場合は、休憩は最低1時間与えること。休憩時間は何をやっても自由。管理職は制約を設けてはならない。
・毎週少くとも一回の休日を与えること。
 
・使用者は、残業命令を出すケースが存在し得る場合は、労働組合と36協定を締結し労働基準監督署に届け出ること。残業した人には、割増賃金や深夜労働手当、休日出勤手当等を支払うこと。賃金の割増・プレミア分は最低でも25%以上とすること。いわゆる「高プロ」はこれの対象外とする。働かせ放題。
 
・使用者は、入社して6ヶ月以上経過した人に対して年次有給休暇を与えなくてはならない。細かい内容は組合と決めてね。
年次有給休暇は、労働者に自由に行使させること。理由を聞いたりして行使を邪魔してはダメ。ただし、利用する日を本人と相談のうえ、変更することは可能。これを時期変更権と言うのよ。
 
・未成年の人を雇用する時は、親とよく相談すること。昔みたいに労働搾取は禁止。人身売買もダメ。
芦田愛菜ちゃんを夜10時以降、TV出演させてはならない。
子供店長を炭鉱夫として使ってはならない。
・妊婦を炭鉱夫とするのも禁止。
・妊婦には、出産1.5ヶ月以上前に産前休暇を取らせること。出産後2ヶ月は就業禁止。言っとくがこれは最低限の日数。組合と十分に話し合って、出産・育児に関する制度を整備すること。ライフワークバランスをよく考えて制度設計すること。
 
・第68条には、生理休暇だって謳ってあるんだぜ。
・労働者が業務に関係することで怪我・病気になった場合、使用者は治療費・療養費を負担すること。お前らのせいでそうなったんだから当たり前だろ。
都道府県ごとに労働基準監督署を置くので、使用者・管理職はその人たちの言うことを聞いていい会社にするように。間違っても、労働搾取、酷使、ハラスメントなどやらかして査察を受けたりしないこと。
・賃金、災害補償の請求は2年以内、退職金請求は5年以内に行うこと。これを超えると時効になります。
・この法律に反すると「不当労働行為」となり、使用者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が命ぜられますが、他の法律の罰則に照らし合わせてみれば、最も軽い刑罰の部類に入りますね。企業経営者にとっては「ブラック認定」されることへのダメージの方が大きいです。
 
 以上の文書を見れば明らかですが、巷にある下記の行為は「違反」です。
 
年次有給休暇を取らせない
②会社を辞めさせない。強制労働させる。これ憲法違反です(職業選択の自由
③退職手続きや転職手続きに必要な書類を発行しない
④賃金未払い
⑤残業代を払わず時間外・休日労働させる
⑥仕事のミスに対しペナルティを課す(罰金制度)
⑦上司が部下を威圧して強制労働させる
⑧何らかの”人質”をとって強制労働させる
⑩社員を追い込んでメンタルにし治療費・療養費を払わない
 
 企業経営者は、法律を守れよな。