現代のお役所仕事
確定申告の時期がやって来た。
働き始めた頃は、何のことやらさっぱり分からなかった事であるが、私はここ数年、毎年のようにこの手続きを取っている。
自営業、事業者の方にとっては、「納税の義務」を果たすためのとても大切な、必須の手続きであるが、企業に勤める所謂「サラリーマン」にとっては、そう度々機会があるものでは無い。
代表的な機会というのは、医療費が10万円以上かかった時、家を買った時、遺産相続をした時、株で大儲けをした時などか。
株で大儲けとか犬神家の様な莫大な遺産相続イベントに巻き込まれる事などは、そうそうは無い。あれば嬉しい。羨ましい。
私の場合、多くのケースは医療費控除だ。
私が大病を患った訳ではない。
妻が歯の治療をした、長女が靭帯を切って入院・手術、これまではその様なパターンだった。幸い私はそんな酷い目にはあっていない。
さて、確定申告である。
私は今回もPCで「確定申告コーナー」にアクセスし、そこで指示された手順に基づきデータを入力、結果をプリンターに印刷し郵便で税務署に送付した。
これ、ビックリなのであるが、操作はとても簡単。
結果は自動計算。
データは保存が出来、来年に雛形として流用可能だ。
そして、いつからか源泉徴収票すら添付しなくても良くなった。
医療費控除の場合も、レセプトを何十枚も束ねて申告する必要はない。何月何日に何処の医院でいくら支払ったか、を入力するだけで良い。
便利、極めて便利だ。
以前、家を買った際に行った確定申告は、用紙を役所から取り寄せて所定欄に数字を記入していく方式で、はっきり言って内容は訳分からん状態だった。計算も手計算。
それに、計算間違いをすると後で大変なことになる。
後日(数ヶ月後)、税務署より「修正申告」の命令書が来る。
それには、延滞金支払いの命令と、ご丁寧にも「不満があれば裁判で争え」との添え書きがある。
税務署は、単なる記入間違いの修正では許してくれない。
申告→修正までの期間は「税金の延滞」になる。
この国は恐ろしい。
命令書を何年も後で申告者に送付したほうが、実はお役所は多くの「延滞金」をゲットできるのだ。
多くの場合、申告者は「誤り」に気付いていない。
それをいいことに税務署は納税者に修正行為を命ずるとともに「脱税」と同じ扱いである延滞を課すのだ。
この仕打ちに妻は激怒し「リベンジしてやる」と言っていた。実はこの時、税務署に申告に行ってくれたのは妻である。
彼女は「役所の人に言われた通りに記入しただけだ」と憤慨していた。
因みに彼女のリベンジとは次の確定申告では正しく計算し、しっかりと所定の税金を還付されることである。決して役所を爆破することでは無い。
さて、手書きの申告と失敗の話はもう20年くらい前の話。
今はスマホで手続き出来る。これは紛れもなく「お役所仕事の進化」だ。昭和の時代を思い起こせば、素晴らしいことである。
「お役所仕事」という比喩は、いい意味で使われるものでは無かった。
しかし、現代は違う。良い意味でも使える様になった。
昨年末、法務局で抵当権抹消の手続きを行った。住宅ローン完済に伴うものだ。
銀行で担当の方に聞いたのだが、この手続きは最近は司法書士に依頼せずに、自分で行うことも多いとのこと。
そこで、この際、私は書士に依頼せず自分で手続きしてみようと考えた。
まず、法務局に電話して、手続きについて問い合わせて見た。
担当の方は「各種の司法手続きに関する相談会を毎日やってますので、それを利用されると簡単で便利ですよ。無料です。もちろん、当日、直接窓口で書類作成を行い提出されても構いません。ただ、内容に不備があるとお時間がかかりますけどね。」と説明してくれた。
私は数週間後の予約を取り、その日、必要な書類を持って役所に出かけた。
必要書類は銀行で既に教えてもらっていたので、迷うことは無い。
相談窓口に行くと、年配の司法書士っぽい方が出て来て、手続きに必要な書類を揃えた上で「ここにXXXと書いてください。こちらにはYYYYです。」と全て指示してもらった。
20分程度で書類作成は完了。お隣に提出用の窓口があるので、そこの担当の方に書類を手渡して手続きは終わった。
「完璧なエスコートじゃん。」
私は大層驚いた。お役所の仕事は変わった!
凄く効率的だ。これなら楽勝。
この手続きを司法書士に委託すると、恐らく代行費用は1万円では済まない。
しかし、今なら役所の力を借りて個人でも十分に手続き可能だ。
家を購入する際の登記を自分でやる人はまずいないであろうが、抵当権の抹消程度なら十分に可能。参考にしてもらいたい。
今は免許の更新も最寄りの警察署で行える。私が行く某所は窓口のお姉さんの対応が最高に悪く毎回不愉快であるが、便利は便利。
パスポートの申請も以前に比べると見違えるほどやり易くなっている。
以前のお役所は面倒臭くて当たり前だった。
書類に不備があると修正を命じられ、長い行列の最後列に何度も並び直すなどは当たり前だった。
お役所での手続きが好きな国民など、一人もいない。役所とは元来不愉快な場所であった。
この国のお役所と仕事・手続きには、色々な問題があるが、それでも以前よりも、着々と良い方向に進化を遂げている事は間違いない。
公務員の皆様、ありがとう。そして、ご苦労様。
これからも効率化を進めましょう。