オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

Volkswagen smallの総括

 UP!に乗り始めてから10年が経つ。

 結果として長い間付き合いとなったが、これまでは新型が出たら乗り換えようとは思っていた。

 しかし、恐らく後継車は出ないものと想像している。

 VWはこの数年の間に全ての車をEV化すると既に発表している。

 UP!は新型のガソリン車としての発売は恐らく予定されてなく、この後は小型のEV車が新しい車名でデビューするのではないかと思っている。

 とすれば、今の車がVWスモールとしては最後のガソリンエンジンになるかも知れない。

 それならそうで、最後までこの子とお付き合いしようという気になっている。

 妻もUP!をたいそう気に入っているので、このまま使い切ってフェードアウトするのが幸せだと思う。

 因みにUP!は秋田に置いて来たので私はここしばらく姿を見てはいない。

 UP!についてはここで総括しておく。

 

1.デザイン

 とてもシンプルで、いいデザインだと思っている。10年経っても全く飽きない。

 フロントの「VW」のマークがデカ過ぎる気もするが、これぐらい目立たせないと道路でも駐車場でも他の車達の中に埋もれてしまうだろう。

 遠くから見てもすぐUP!だと分かるのが良いし、それはとても大事なことだ。

 妻が国産車に代えたがらない大きな理由の一つは、この主張の強いデザインだと思う。

 「日本の小型車ってなんかちゃっちい」

 と私も思ってる。

 

2.ボディ

 小さいが極めて頑丈に作られている。ボディ剛性が高いので、ほどほどスピードを出しても全く不安なく安定して走る。

 私は140Kmくらいまでしか出しことがないが、その時はしっかりと踏ん張って走っていた。お勧めはしないが、それ以上の速度を出したとして安定性が損なわれることはないと思う。

 この国での実用的な速度範囲において、十分過ぎる品質だと言い切れる。

 

3.エンジン

 1ℓ、3気筒、DOHC12バルブのガソリンエンジン。燃料はハイオク指定。

 75PSであるが車重が920Kgと軽量であるためビュ〜ンと加速する。

 モタモタしたところはない。トランスミッションが5速ASGであることも加速の良さに貢献していると思う。

 ただ、変速ショックは大きい。”ガッコン!”と来る。

 日本車とは比較する必要なし。全くもってダメ。

 ただし、これをマニュアルとして操作する選択肢はあり。

 このエンジンは、現行POLOに採用されているものとシリンダブロックは共通。POLOにはターボやインタークーラーがくっ付いているのでこれよりも当然早い。

 乗ったことは無いが、UP!のGTIはバカっ早だと思う。

 

4.タイヤ

 話題になることは無いと思うがこれはトリビア。185/55R15である。

 この小型サイズの車で185は珍しい。さらにはホイールも15インチと大きい。

 高速走行をシレッとこなす理由の一因はこのタイヤであろう。

 この車体サイズとタイヤのバランスは国産車では見られない。

 

5.インテリア

 プアである。

 多分、ずっと国産車しか乗ってこなかった人には、この貧相さは我慢できないだろう。

 ドイツ車だからシートは良いだろう?と思われるかも知れないが、そういうことは私にはよく分からない。国産車と変わらないようだけど…。

 インパネもチープ。

 室内に収納箱が極端に少ない。だから長時間のドライブをすると室内がメチャメチャに散らかる。

 ただ、車のサイズからすると室内スペースは大きく感じる。

 トランクスペースも小さい。この車で夜逃げは不可能。着替えだけしか持ち出せない。

 実用で一番不便なのは荷物をあまり積めない、ってことではないか。

 この車でホームセンターに、鉢植え以外のものを買いに行っても目的は果たせない。

 この車が183万円で買える最大の理由は、ここにお金をかけていないからだ。

 

6.エアコンとナビ

 ふざけんな、バカヤロウの世界である。

 エアコンの吹き出し口がインパネの”上”に切ってある(前面ではない)。

 またインパネ前面にナビを設置するスペースがない。

 なのでエアコンの吹き出し口の手前にホルダの土台を糊付けするしかナビ設置の方法がない。

 そうするとエアコン吹き出し口をナビが塞ぐ形になるので冷風が室内に流れにくい。

 よってこの車、夏は相当に暑い。サイテー。

 スマホホルダもエアコン吹き出し口が前面パネルにないので付けられない。これはデザインの敗北。

 ドイツ人は恐らく車の中でスマホとエアコンを使わないのだろう。

 一方でヒーターが前席の両シートとドアミラーに標準で付いている。

 東北地方ではこれは便利だ。

 だが、秋田生まれの妻はこの機能を使わない。

 

7.使い勝手

 120点。

 狭い所で軽自動車に乗ってる人と同じことが出来る。

 妻であっても車の四隅を擦ったことがほとんどない(1回だけ。油断した、と言ってた)。

 この車の最大の美点と言える。

 

8.走り

 この車、東北自動車道よりも首都高速を走ったほうが楽しい。

 キビキビ走る、との表現がピッタリ。私はとても良いと思ってる。

 

9.燃費

 街乗りだと13〜17Km/ℓ。

 高速道路だと20Km/ℓ以上は確実に走る。

 よって燃費については100点だと言える。ただしハイオク指定。

 笑っちゃうんだが、燃料タンクは35ℓしか入らない。

 でも満タンにすれば、東京から秋田までは無給油でいける。これは事実。

 これまでGSで5000円以上払ったことはない。

 

10.静粛性

 50Km/hまでは相当にうるさい。

 しかし、それ以降もうるさい。

 エンジン回転が3000rpmを越えるとうるさい。でも超えなくてもやはりうるさい。

 UP!のエンジンはうるさい。

 

11.維持費

 結論から言うと国産よりは割高かも知れないが「バカ高」ではない。「外国車は維持費が高い」は昭和の伝説になりつつある。

 払ってる税金のことを考慮すると我々の敵はメーカーではなく国である。

 ちなみにVWのサポートは「素晴らしい」。

 

12.VWという会社

 世界最大級の自動車会社になってもうた。

 若い頃からゴルフに乗るのが夢だったがどうやらそれは”ない”ようだ。

 しかし、VWという会社、そのプロダクトを知るには十分な10年間だったと思ってる。

 UP!は良い車だ。

 2012年4月に長谷部を応援にドイツに渡ったのが全てのきっかけ。

 彼は今でもその国にいる。現役選手で。

 VWは私たち夫婦に色んな思い出を与えてくれた会社だ。