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オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

伝説という名の車

 1948年(昭和23年)静岡県浜松市の、とあるガレージで生まれたその会社は、いまや自動車、バイク、発動機、ボート用エンジン、自走式ロボット、そして航空機用エンジンまで手がける世界的企業となった。

 本田技研工業(HONDA)。

 設立当初からオートバイ、自動車レースに積極的に参加していた事から、国内外ではその「独自性」「技術力」の高さを評価されてきた。電機のSONY、自動車のHONDAは、昭和において紛れもなく日本を代表する企業であった。

 HONDAは、もともとは2輪車メーカーであり、自動車の開発・製造に参入したのは1963年(昭和38年)というから、業界としては後発である。

 しかし、翌年にはF-1に参戦、5年間の活動で優勝1度の実績を作っている。

 HONDAの名前を世界に轟かせたのは、CVCCエンジンの開発である。

 この環境対策エンジンは、副燃焼室を持たせてガソリンを完全燃焼させるという、当時では画期的な発明であった。レシプロエンジンの純粋な技術的進化をもたらしたという面で、その貢献は歴史に刻まれる事になる。

 HONDAは、その後もエンジンバルブの移動量(リフト)、開閉タイミングを制御する技術(VTECと呼ばれる)を開発するなど、エンジンの高性能・先進技術を追求する姿勢をアピールし続けた。

 HONDAの提供する自動車は、世界中のユーザーから受け入れられ、その販売数・規模を拡大し続け、やがて生産規模は国内2位の座を占めるほどにまでなった。現在、HONDAは、軽自動車から大型高級車までを提供するフルラインナップメーカーである。

 

 HONDAの提供する自動車には、「特徴」がある。いや、「〜がない」という特徴がある。

 それは、「後輪駆動車」を生産していない、というものだ。

 4輪駆動車は存在するので、後輪駆動できる車が無いという訳ではないが、所謂FR車が存在しない、ということだ。

 これは、フルラインナップを謳うメーカーとしては大変珍しい。

 理由は分からないが、技術力が無いという理由ではないのは間違いない。

 「作らない」のだ。

 何らかのポリシーがあると考えるべきであろう。

 Man maximam Machine minimam の思想があるからだ、と聞いたことがあるが、その真偽は知らない。

 とにかく、HONDAは、FRは作らない。

 これは、ある意味で潔い事であるが、欠点もある。

 それは、高級車メーカーとして高名なダイムラーベンツBMWベントレーの作る自動車の大部分が、FRである事実と関連する。

 「高級車」→「大排気量エンジン」→「スムーズな走り」→「後輪駆動」

 極めて単純化した図式であるが、ベンツのSクラス、BMW7シリーズは、このコンセンプトに基づき設計されている。

 5〜6ℓV型12気筒という途方も無い大排気量エンジンを搭載し、後輪駆動で走らせている。

 これほどの大型エンジンになると、エンジン自身の重量が車台重量の多くを占めるようになり、自ずとその搭載位置(普通は前、後はポルシェくらい、フェラーリは別格)と駆動輪の関係がシビアになってくる。

 重量バランスと発進時の重心移動の関係からも、多くの自動車メーカーが、高級車=後輪駆動を選択する理由、論理的根拠とするところである。

 大排気量のエンジンで前輪駆動をやると、極端な前加重による前輪の空走、トラクション不足、走行安定性のアンバランスを招く事必至である。

 シャシー設計の最適性・必然性から、FFの大排気量車など、どこの自動車会社も開発しない。

 はずだった・・・。

 しかし、HONDAは違った。

 2.7ℓ、V型6気筒のエンジンを縦置きにしてFF車を作ったのだ。

 この場合、V型6気筒である理由は、前後の重量バランス、前輪のトラクション確保、ボディデザインの関連からも必然であったのだろうと推測する(直列6気筒は横置き出来ないし、縦置きで前輪駆動は前加重が酷く技術的にムリ)。

 この奇天烈な高級車には「伝説」という名前が与えられた。1985年にリリース。

 この車は、生まれもって「FFの高級車」という十字架が背負わされていた。車台設計上は、紛れもなく足かせ、制約、ハンデキャップだ。

 良いモノを作りたければ、FRでやれば良い。

 これは、自明だ。

 しかし、HONDAはFFに拘った。「技術」でハンデキャップを乗り越えようとした。

 その想いが、この30年間で果たされたのかは分からない。

 発売当初とは違い、今はコンピューターを使って緻密なエンジン制御、トラクションコントロールが可能となった。

 当時から、格段の進歩・進化を遂げている事は間違いないと思うが、それにしても、そもそもの設計コンセプトが歪で、迂回した実現方法・技術を駆使している事は否めない。

 もっと、単純でスムーズ、正道があったはずだが、HONDAはそれを選ぶ事は無かった。

 独自技術、個性、拘り、飽くなきポリシーを選択したのだ。

 その車は、先日、モデルチェンジした。

 「3モーター・ハイブリッド」という超先進技術を纏って現れた。

 ・・・この車、相変わらずFFである。

 4輪駆動車であるが、前輪と後輪をつなぐプロペラシャフトを持たない。

 だから、モーターを取り外せば、すぐFFになる。ちゃんと走るかは不明であるが。

 前輪駆動であるが、後輪も別モーターを使って左右を積極的に差動制御するらしい。

 凄い・・・技術だ。他のどこのメーカーもやっていない。

 スタイルは、この上なくHONDAである。内装もHONDAそのもの。日本離れしている。

 とても格好よい。絶対、日産には真似出来ない佇まい、だ。

 その名に相応しい走りは、実現出来ているのだろうか。

 ”伝説” が走り始める・・・

 

 

 

 

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