オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

「八重の桜」は会津魂を伝えられるか

 NHK大河ドラマ「八重の桜」が始まった。今、最も油の乗った女優を抜擢しての新番組であり、前回の評判が芳しくなかったNHKにとっては力の入るところであろう。

 また、この番組の企画意図に東北への応援(支援と言いたくない)があることも周知のことであり、俄然注目度も高くなると思う。この辺りのものごとの運び方がNHKは上手い。

 予告編を見ただけであるが、綾瀬はるかさんはハマっていると感じた。凛々しく、美しく八重さんを演じ切ると期待している。

 山本八重という人物は、有名とは言い難いと思う。

 私も日本TV「白虎隊」(86年)を見るまで知らない人だった(この時の八重役は故田中好子さん)。

 私は、会津藩と長州・薩摩両藩の過去の経緯、いきさつをこの番組で初めて知った。30年近く前に制作されたものであるが、今見てもこのドラマはとても良く、また丁寧に作られていると思う。

 当時、会津の白虎隊記念館の館長が、制作サイドに重要な資料提供を行ったらしいが、その時の条件として「会津藩の真実を公正な目で伝えて欲しい」旨のことを仰られたらしい。

 私は知らないが、時の明治政府は恣意的に賊軍、悪者を作って国民に教育、喧伝していたらしい。

 その一例が、会津藩であり、足利尊氏であり、西郷隆盛なのであろう。

 私達は、あまりご近所の国の歪んだ歴史教育を非難するものではない。私達のお国も大して違わない可能性がある。

 

 会津には行ったことがある。白虎隊記念館や彼らの墓も見てきた。鶴ヶ城は大変勇壮で美しかった。

 行った時期は秋だったので、地元では菊人形が飾られており、何とモデルは西郷頼母だった。この方とか神保親子(どちらも家老)は地元では有名だ。

 そう言えば、野口英世会津の人だ(やはり記念館がある)。

 宿泊は五色沼のそばのペンションだった。

 猪苗代湖から磐梯山にかけての風景は大変美しい。

 地元の方々がこの風景に愛着を持つ理由がよく分かる。興味のある方には旅行をお勧めする。間違いなく満足されると思う。

 

 「ならぬものはならぬ」とは会津の方が使う有名なフレーズであるが、今年のキーワードになるような気がする。

 会津の人達の生真面目さ、実直さ、そしてそれ故に辿ってきたこれまでの県(藩)の歴史が改めて見直される契機になると思う。

 そして今の日本人が忘れかけていること、これからの日本に必要なことを教えて、また認識させてくれるかもしれない。

 新しいことではない。

 以前の日本人の中に息づいてた価値観、美学といったものだ。

 

 実は、過去に総理大臣になれた(乞われた)のに、そのポストを蹴った政治家がいる。当時、前代未聞のことであったがご本人は頑として首を立てに振らなかった。

 まさに固辞した。

 信じられないのは担ぎ出そうとした政治家達だ。まさか総理大臣を断るバカな政治家がいるとは思わないので大変な騒ぎになった。

 この政治家は、「看板だけかえてもダメだ。党が変わらないと意味がない」といって度重なる要請を蹴り続けた。

 この政治家は自民党の金権腐敗の体質改善が行われなければ総理(この時は竹下氏)だけ変えても意味は無い、と言い切ったのだ。

 そこには一切のブレはなかった。

 私は、「こんな政治家がいるんだ」と驚いた。なんて一本気な人なんだろう、と思った。

 この人物こそが、伊東正義会津出身だ。

 「ならぬものはならぬ」。そう言いたかったのだろう。

 この方、政治家としての引き際、引退も見事であった。

 果たして、「八重の桜」は、会津の人達の生き方、魂の神髄を伝えることが出来るか。

 注目したい。