オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

国民的議論は不要です

 今から28年前、多くのフラッシュ点滅の中で「平成」という元号が小渕官房長官から発表された。TVニュースは早速、街中をゆく人にマイクを向けていた。

 「平成?ピンと来ない」

 「別に昭和のままでいいのでは?」

 「いいですね。平和に成る、っていうイメージ」

 3番目の意見を表明したのは、若い女性の方だったと記憶している。私も同感だった。「平成」という元号は一発で気に入った。

 日本では新しい天皇が即位すると元号が変わる。

 今上天皇の健康状態が兼ねてから懸念されるような状態であれば、新元号の準備は自ずと関係者により水面下で進められている。

 あるいは、天皇が一般に見て高齢であるとの認識がなされているのであれば、それは健康状態によらず、何年かの確信的な事前準備期間をもって検討されているのだと思う。

 現に「平成」については、そうであったと聞く。

 元号は、慣行として中国の古典から引用されるらしい。色々と気になる行動をしている隣国であるが、私達の文化に多大なる影響と恩恵をもたらしてくれている。近々、またお世話になるのかも知れない。

 

 天皇陛下が生前退位の意向を示されているとのこと。

 昨日から、TV、新聞は賑やかだ。

 「陛下のご意志のままにして差し上げれば良いじゃん…」と私は考えていたが、ことはそんな単純ではないらしい。

皇室典範の改正がないと生前退位はできない

天皇が退位の意向を示すことは憲法への介入、政治への干渉となる

天皇退位後の身分・名称をどうする

④前天皇と現天皇が同時に存在すると権威が2つに分断され色々と揉める

⑤皇后さまのご処遇をどうするのか。雅子さまは健康上の理由で皇后さまほどの公務はこなせないのではないか

⑥そもそも、近代では前例がないのでそんなことやりたくない、考えたくない、という国民の意識がある

 ざっと、このような旨のことが新聞には書いてある。

 確かに…、ことは複雑だ。

 しかし、②の考え方は如何なものか。憲法学者法律学者が黙っていないというが、まさか後醍醐天皇の新政を再現するわけではあるまいし、陛下の意向の真意はそのようなものではないだろう。あまりに杓子定規過ぎる。

 ③は「上皇」でいいんじゃね?

 ④も南北朝時代じゃあるまいし、と思ったが、でもそんなこともあるのかな…?国民が天皇派と上皇派に別れるとでも言うのかしら。そんなことが起きたら確かに大変だ。

 ⑥は「国民的議論が必要」とマスコミが喧伝する理由。そして、皇室典範の改正には時間が必要、数年間はかかる、との言い方の根拠であろう。

 

 天皇陛下は、既に80歳を超えられている。健康状態も決して万全と楽観視できないかもしれない。なのに、2年も3年もかけて議論しろとマスコミ、有識者は言うのだろうか。

 それまで(議論が終わるまで)は、これまで通り激務を有無を言わずこなせ、働け、と言うのだろうか。

 自分から天皇を止めたい、と発言されるのは憲法違反で重罪ですよと言うのか(恐れ多い)。

 安保法制が憲法違反であることを承知で、ほんの数ヵ月間の議論と強行採決で早々に成立させた政府と、それを傍観した専門家、有識者は、皇室典範の改定には2年も3年もかけるべきだと言うのか。

 私は目眩がする。

 「国民的議論」などしなくとも、私達の意思は決まっている。

 

 「陛下の思うままにして差し上げたい」…だ。

 

 私達に変な責任を転嫁しないで欲しい。

 南北朝時代を反省するのであれば、その方策を検討・提示するのは専門家と政府の仕事だ。

 建前論を振りかざして、このまま陛下をこき使うつもりなのであれば、それこそブラック国家だ。

 今こそ、ソーリのリーダーシップが求められている。