JR東日本の社長に告ぐ
トヨタ自動車の18年度決算は、史上最高益となるらしい。
利益額は2兆円を遥かに超えるらしく、誠に素晴らしいことである。
現在の社長は、豊田創業家の出身であるが単なる七光り、御曹司、バカ息子ではなく、極めて優秀な経営者であることが改めて証明された。
また、この社長、報道関係への露出も多く、その人間性まで世の人の知るところとなっている。
この方が、経営者であり、もう一方でレーサーであること、車をこよなく愛するおっさんであることは有名だ。
結構、気さくに物事を表現される方で、「新型プリウスはカッコ悪い」と言ってマスコミ関係者を驚かせた。
彼が言いたかったのは「こんなカッコ悪い車よく買うよ」ではなく、「私は嫌だけど、うちの若いデザイナーがこれが良い、というから認めたんだ。いまのトヨタはそういう(良い)会社になった」ということらしい。
プリウスのUSAでの不良・欠陥問題、公聴会での弁明、中国での反日運動の際の涙の記者会見、副社長時代のF1撤退会見での号泣など、この方の人間性に見入った人は結構いると想像する。
もちろん私もその一人であり、その際トヨタの社員の人達は本当に恵まれている(羨ましい)と思ったものだ。
何故なら、こんなにも車を愛している人が社長なのだから。
社長が自分の会社を大切にするのは当然として、自社の製品を愛でる、業界全体の発展を展望する、製品を通じて社会の発展を希求するという思考・姿勢は、ひいてはより良い製品・サービスを世の中に問うていくという経営方針につながる。
その点で、会社の経営者が自らの製品を評価する、という行為は極めて重要な振る舞いであると私は思っている。
かつて、日産やマツダが外国資本を受け入れる際、関係者は「外国人経営者に我が社の文化が分かるのか」と懸念したという。現実的には、希少車種であるGT-RやRX-8の製造中止が噂されたりした。
しかし、外国人の新社長はGT-RやRX-8をやめろとは言わなかったらしい。
逆に「これは良い」と思ったようだ。
カルロス・ゴーンはサーキットでGT-Rのハンドルを自ら握ったそうだ。予定の時間を過ぎても車を降りようとしなかったため、関係者が焦ったという話を聞いたことがある。
かくして、この両車は生き残った。
社長の判断は「我が社を代表するに相応しい。これは採算の問題では無い」というものだった。
もし、カルロス・ゴーンが書類だけでGT-Rを評価していたら、どういうことになっていただろうか。あるいは違った結論になったかもしれない。
こういうところが、彼らが優れた経営者と評価される所以であり、また、そういう行動特性を持つからこそ、業界を代表するポジションを維持できているのだと想像する。
優れた経営者は自社製品・サービスを自ら評価する…
経営の鉄則ではないだろうか。
さて、JR東日本の社長は毎日どうやって会社まで通勤しているのだろうか?
何線を利用しているのか。山手?中央線?聞いて見たい。
しかし、これは愚問である。
何故なら、彼は、社用車で出勤しているので、自社の製品=電車は使わない。
東海道線を使ったことがなければ、埼京線もどこからどこまでを走っているのか知らないだろう。
例えば(JRではないが)、副都心線と東急東横線がつながったことが、横浜・埼玉の人たちにとってどのようなインパクトを与えたかは、実際に乗って見ないと分からない。
JR東日本の社長が電車に乗って横浜から川越まで行くわけが無いので、彼にはその意味(利便性・有効性)が一生理解できない。
新横浜から新幹線を利用するにあたっては、重いカバンを持ってわざわざ東神奈川で京浜東北線から横浜線に乗り換えねばならない苦痛を想像できない。
埼京線で毎日痴漢にあっている女性達の苦難は知らない。
横浜駅で人に突き飛ばされてホームから線路に転落することもない。
川崎駅で車イスに乗った方が、東海道線から南武線に乗り換える苦労を彼は知らない。
山手線の車両に監視カメラを何台設置するかなど、どうでも良い問題で部下に任せておけばいい。彼は痴漢されることもなければ、混雑の中、他人から暴力を振るわれる心配はない。
隣に立つおっさんの体臭が気になるとか、顔の近くでガムをクチャクチャされることもない。気持ちの悪い人から痴漢扱いされることもない。
JRの社長は、一度、武蔵小杉から西大井まで(もっとも混雑する路線の一つ)電車で移動してみるべきだ。
さすれば、自分の会社のサービスがいかに下劣・最低・最悪であるかがわかるはずだ。このまま放置できないはずだ。あれは人間の乗るものではない。
JRが例えばホームドア設置に今ひとつ熱心に見えない、緊急性を高く持っていると思えないのも経営者の責任であり思考の問題だ。
社長は、こんなんで良いんですか?
あれは人が乗るものですか?
家畜列車みたいですけど…
「経営者は自社製品・サービスを自ら評価すべきである」
JR東日本の社長、一度、自分の会社の電車に乗ってみろよ…