「グローバル化の代償」
大陸では、半日デモで大いに盛り上がっているらしい。
本当かどうか知らないが、デモには日頃溜まっている政府への鬱憤をはらしている人も交じっているとの報道もなされている。
であれば、恨ましいね。私も、週末の官邸前デモに参加して腐った玉子の一つぐらい、NODAに向けて投げてやろうかしら・・・
ふと、年初の企業賀詞交換会の様子を取材したニュース映像を思い出した。
某コンビニエンスチェーンの社長だったと思う。TVの「今年、政権に求めることは?」という類いの質問に、「法人税の引き下げと消費税の引き上げ」と回答していた。
小売りをやっている企業オーナーとは思えないような回答だ。
経団連の回し者か(?)と思ったもんだ。
今日の自民党代表戦の共同記者会見において、某候補が法人税減税の必要性を訴えていた。このままでは、タックスヘブンのシンガポールに日本企業は皆逃げてしまいますよ、と。
さすがは自民党。
”政財官”の鉄のトライアングル、癒着構造を作っていた政党らしいオピニオンだ。
自民党に絶対政権を渡してはいけないことを改めて思い出した。
日本の法人税は「欧米に比して高い」という人達がいる。
この”欧米”という言い方が食わせもんなのだが、それにしても、最高税率がUSAより高いのは事実らしい。
であっても、日本に企業なるものは400万社以上存在するが、その中で法人税を払っているのはほんの数パーセントだ。現に、大手銀行の多くは近年法人税を納めていない。
法人税は、経常利益ではなく法人所得をベースに課税するため、単純に黒字の企業全てがそれを納める訳ではない。さらには、中小企業、個人事業者の多くは、その法人所得の規模から法人税を免除されている。
先のコンビニ社長は、大変儲かっていて、法人税をしこたま納めているので、そう言ったのであろう。
果たして法人税を下げたら何が嬉しいのか?
配当を増やせるから株価、企業価値が上がる?
いずれにしても、働いている労働者、社員には関係のないことだ。
”グローバル化”の名の下に、企業の海外シフトが行われてから久しい。
もはや、企業の拠点を国内に置くメリットはない、と豪語する経営者も少なくない。政府が、円高対策、雇用規制緩和、法人税減税等に踏み込まなければ、企業は国外に出て行くぞ、と経団連は政府に圧力をかけることにご執心だ。
イオンの人事担当者が「もう日本人管理職はいらない」旨の発言をして、ネットで話題になったりもした。楽天、ユニクロは既に自らを日本企業とは位置づけしていないようだ。
国内に主要企業がいなくなったら大変だ!と私達は心配しなければならないのであろうか。
消費増税は決まったが、この上、法人税を下げて、その分の税負担を私は”国際化”の名の下に甘受しなければならないのか?
生活者の不安を煽るような発言があちこちから出ている。
私は、ユニクロも楽天もイオンも日本から出て行ってもらって結構だと思っている。別にあんな企業がなくとも、amazonがあるからOK。安くチープな服は、ユニクロじゃなくても手に入る。イトーヨーカドーにだってある。
消耗品の衣料なんて、ブランドに拘らない。
私はユニクロデザインはあまり評価していない。悪くないが、悪くないだけだ。
アドバンテージがあるとは思っていない。
だから、どうぞチャイナにでもマレーシアにでも行って下さい。そこで、外国人を使ってデザイン、バイヤーをやれば良い。
所詮、その程度の付加価値の事業なのだ。安価な衣料とはそんなもの。それ以上でも、以下でもない。どこでもやれる商売だ。
しかし、工業製品は違う。
アイデンティティがある製品は、それをどこで設計、製造するかが少なからずプロダクトに影響する。
だから、トヨタは”日本”に拘っている。
USA市場向けの車はともかく、日本市場向けの車は日本人スタッフがコンセプトを出さないとやはり上手くいかないのだ(全てではないが)。
絶対条件ではないが、やはり嗜好による付加価値は歴然と存在する。
ホイヤー、ヴィトン、フェラーリ、J-PRESS、VW等がその国籍を意識させず事業をやっているかと言えば、そうではないだろう。ドイツ、イタリア、USA、スイスを強く意識させられる。
”これ、すっげぇ〜!”といつも思わされる。
日本人がやったほうが良い仕事、日本人にしかできない仕事は絶対ある。
そのような仕事は、やはり国内雇用を無視しては成り立たない。
税金、お金の問題ではないのだ。
トヨタは多くを語らないが、その姿勢を強く打ち出していると思う。製造業の雄として是非、頑張ってもらいたい。メイドインジャパンの最後の砦であると思っている。
そして、ユニクロは早く出てってもらいたい。自分たちは勝ち組であり、故に自分たちのビジネスモデル、ひいては企業文化が正しい、正道であると言わんばかりに見える。
ビジネスの成功が全ての価値観を支配するとでも考えているのであれば、とんでもない。
似たようなことが某居酒屋チェーンの社長発言にも見られる。ビジネスで成功したのだから私は正しい、と言っているようだ。ここには強い驕りを感じ取る。同じく出て行けば良い。飯屋、飲み屋はいくらでもある。
今、中国との関係が上手くいっていない。韓国もであるが・・・。
経済性優先の結果、日本企業の多くが中国に現地法人、事業所を持つに至っている。両国間の政治課題の解決を見る前にだ。
多くの経営者にとって、政治リスクは二の次であり、超安価な中国労働力を目当てに生産シフトを行った結果だ。
万一、中国政府が強硬な政治姿勢を示した時に、日本の企業経営者は、中国にいる邦人とその財産の安全をどうやって担保するつもりなのであろうか。
工場の2つや3つ、放棄してもせいぜい数百億円程度の損害で済むが、人命はそうはいかない。
外国の大使館に突撃したり、大使の乗る車を強制的に止めて国旗を奪ったり、中国人が経営する日本店を襲撃したりするお国柄だ。”愛国”であれば何でもOKで、国際ルールや常識が通用するとは到底思えない。極めて危険な地域だ(敢えて国とは表現しない)。
今、”選択と集中”、”グローバル化”の真価が問いただされ、リスクマネジメント能力が試される局面を迎えているのかもしれない。
日本の経営者は、リスクを取ったのだ。その経営判断をしたのだから、必要に応じてその代償は覚悟せねばならない。
そもそもが安全な地域ではないのだ。当時の労働コストが日本の1/7だっただけ、・・・だ。
どちらかというと、私は中国・韓国との政治状況を悲観している。
心配が当たらないことを望む。