オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

「ハワイ」と「レイテ」〜開戦の日〜

 今日、12月8日は72年前に対USA戦争が開始された日だ。

 8月15日は、全ての日本人がその日の意味を記憶しているが、12月8日となると状況は変わって来るかも知れない。もう、70年以上前の事だ。知らない人がいても、おかしくはないかもしれない。

 子供に、聞いてみた事がある。

 「日本とアメリカが戦争した事があるの知ってる?」

 「知ってるよ。学校で習った」

 「どう、思った?」

 「何でそういうことになったの?ヤバくね?」

 

 子供にも、アメリカに戦争を仕掛ける事の「ヤバさ」は分かるらしい。

 アメリカとの戦争が不可避となったことの理由が飲み込めないのであれば、お隣の国と仲が良くない経緯についても、恐らく詳しくは理解出来ていないのであろう。

 自分の子供には、大人になったら、自らの手で近代史をしっかりと学んで欲しいと思っている。

 今の日本では、こういうことは、学校で学んでもダメだ。何らかのバイアスがかかっている可能性大だ。

 特に、学校の先生達が属する労働組合がイデオロギー闘争を今だ好んでいる限りにおいて、まともな学習内容など期待しようも無い。

 朝日新聞が「日の丸を見たら精神的に不安定になる」という教師の記事を以前掲載していた。

 戦争に従事していない人が国旗を見ただけで、そんな精神状態になるのであれば、その人の加入する組織は、とんでもない洗脳教育をやっていることになる。恐ろしくて、学校に子供を預けられない、と思っている。

 あの人達の行動は、現代日本においてはエキセントリックに過ぎる。

 

 最近、2つの印象的なニュースがあった。

 ひとつは、フィリピンでの台風被害。もうひとつはハワイ沖で「伊400」が発見されたということ。

 この2つ、先の戦争といささか関連がある。

 「伊400」は、大戦中に建造された潜水艦であるから、関係があるのは当たり前であるが、注目したいのは何故それが発見されたのが、呉や長崎、あるいは太平洋上ではなく、「ハワイ」であるのか、だ。

 もう一つのフィリピンでの災害については、台風被害の大きい場所の一つが「レイテ島」だということ。

 

 「伊400」は、俗に「海底空母」とも呼ばれている。

 この潜水艦、何と、飛行機を3機も搭載できた。水上飛行機であるが、もちろん、爆弾も搭載出来る。報道された映像では確認出来ないが、この船の甲板には長大なカタパルトが敷設されている(実際に飛ばせた)。

 日本軍は、この潜水艦を多数(計画は18隻)建造して、USA本土のパナマ運河を空襲しようと計画していた。

 目標は、ハワイではなくUSA本土だったのだ。

 日本海軍の何と言う構想力だろうか。たまげる。

 この「伊400」は、地球を1.5周(航続力は42000海里)できるとか、言われているが、その巨大さの理由は、通常攻撃兵器に加え、日本本土より遥か彼方に進出してのロングレンジ攻撃(空襲)というミッション・性質を持たされていたからだ。

 「伊400」は、排水量3500t、全長122mという途方もない大きさだ。

 この艦に、小回りが利かないという致命的な欠点があるのは当たり前であるが、このような奇抜な構想を具現化し、さらには艦隊編成(実際に3隻が竣工した)にまで持ち込んだ日本の構想力・実行力、建造力に、当時のUSAが驚愕し、また、本当かどうかは分からないが「恐れた」としても不思議ではない。

 ソビエトへの技術流出を恐れて、「伊400」は破壊処分された、と報道されているが本当だろうか?

 少し贔屓目が過ぎるのではないか?

 私に言わせて頂ければ、終戦後、「伊400」はハワイに持っていかれ、そこで「晒しもの」になった上で、撃沈されたのだ。

 今では信じられないことであるが、日米開戦は日本による「オアフ島」空襲が発端だった。それが、今日、12月8日。

 現地では3000名以上の方が空襲で亡くなっているそうだ。

 私は行った事がないが「アリゾナ記念館」に行くとUSAから見た場合の「真珠湾空襲」が良く理解出来るそうだ。

 それでも、USA国民にとっては、「東京大空襲」の10万人の犠牲者と「ハワイ空襲」における屈辱と被害は、等価交換とはならないらしい。私たちの罪は相当に重いということだ。

 

 「晒しもの」になった、とは私の弁である。

 しかし、唯一アメリカ領土の中で敵国からの空襲を受けたハワイにおいて、日本の先進技術の一つである「伊400」を現地の方々の前で「破壊」して見せた、というのは当時のUS NAVYによる戦勝パフォーマンスであった、と言ってしまうと、僻みに過ぎるだろうか。

 「日本の技術は素晴らしい」とか言っている気分にはなれない。

 「伊400」とビキニ環礁で水爆実験の標的となって沈んだ「戦艦長門」はどちらが ”幸せ” だったのだろうか・・・

 

 そもそも、兵器に幸・不幸など関係ないが・・・

 

 「レイテ島」は、戦争末期、日米で艦隊決戦、のようなものが行われた戦場だ。

 長くなるので詳細は省略するが、この海戦のトピックスをあげると、戦艦大和が初めてその存在理由である「大砲」を撃ったこと、「不枕」と言われた戦艦武蔵が沈んだこと、「神風攻撃隊」が組織されたこと、などがある。

 レイテは、日本の古戦場なのだ。

 そして、ここでの戦いが敗北に終わった時点で、日本は降伏の準備に入るべきであった。

 ここでの戦いで、日本軍は、戦術、戦略、兵器、装備、マネジメントの全てを否定されている。連合艦隊の艦艇もその殆どが失われた。もはや、現実的には、USAに挑める何ら手段を持っていなかった。

 「負け」だった。

 ここで、降伏していれば「東京大空襲」も「沖縄での地上戦」も「広島・長崎の被爆」も無かった。

 機会があれば、是非関連資料を見て欲しいと思う。

 この海戦での日本軍は「支離滅裂」だ。

 もう、この段階で軍部に正常な判断・予測をできる幹部はいなかった・・・。

 この後は、「滅亡への道」があるだけだった。

 このあと大本営が発したのは「1億玉砕」・・・だ。

 

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 特定秘密保護法が成立した。

 今朝は、マスコミが政府に対する猛烈な批判を繰り返していた。

 「治安維持法の復活」

 「いずれ、政府の暴走を許すことになる」

 「国民の知る権利、報道の自由を奪う悪法」

 マスコミの言うことも理解出来るが、今日は「開戦の日」だ。

 今日は、70年前、自分達職業プロフェッショナルが欠落していた価値観、先見、叡智について考え直し、反省する日ではないのか?

 私は一国民として、「戦争を起こさない為にやるべきこと」を今日は考えている。

 マスコミは、変な選民意識を捨てて、今日ぐらいは真摯に「非戦」について考えてもらいたい。

 70年前、知る権利、正しい情報を伝える義務を放棄したのは誰だったか。

 「伊400」を誉めている場合ではない。