オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

首都に雪の降る日

 世界的感染症の終息を見る事なく2022年は明けた。

 今年も人類とウィルスの戦いは継続する。

 それに関連する人間同士の衝突もだ。

 

 さて、首都圏では新年早々に雪が降った。

 1月6日。

 その日、たまたま私は在宅勤務を解除し会社に出ていた。前日の天気予報で積雪の可能性(数センチ)が広報されている事は知っていた。

 いつもであればさっさと仕事を終え、そそくさと家路につく私であるが、その日は事情が違った。以前から築地のレストランで同僚と食事をする約束を立てていたのだ。

 これは、年内に企画し同僚の同意を得てレストラン予約を済ませていた事案であるので、降雪などは当然予測・予定していない。それも東京都区内での天候の行方のことだし。

 その日、天気予報はものの見事に的中し朝から雪がちらついていた。

 予報では雪は昼頃から少し多くなるが夕方には止み、その後はお天気回復というものだった。しかし、お昼過ぎからの空の様子を見ていて明らかに天候が予測とは異なっている事を自覚した。

 私は昼過ぎ、窓の外を見ながら一緒に夕食をとる予定の同僚の一人を呼んだ。

「どう思う?この雪…」

「ああ、今日の夕食会のことを気にしているんですか?止むかなぁ。」

 窓の下を見ると近所の高層マンションに住む子供であろうか。小さな男の子と女の子が雪だるまを作っていた。

 私は微笑みながら呟いた。

「この雪、止まないな。予約したホテルは築地駅から10分程度あるんだ。歩けると思う?」

「やばいすね。皆ビジネスシューズでしょうから。」

「諦めるか…。怪我覚悟でやるもんじゃないし。」

「また、今度にしましょう。」

 私は14:00頃にはチームメンバに帰宅命令を出した(夕食会中止も)。そして私も15:00過ぎには事務所を出て帰宅についた。

 本社から帰宅指示の通達が出たのは16:00頃だったようだ。

 この後、東京に何が起きたのかはニュースで見た通り。

 まあ、そんな大層なことでは無かったが。

 

 天気予報では都内での積雪は3cm程度と言っていた。

 だが、気温によっては雪はさらに多くなるのは常識。私たちの予測と判断は結果として正しかったということになる。

 あの雪の中、都内を普通に歩く事は無理だ。それなりの対策をしていないと雪道に慣れていない人は酷い目にあう。

 案の定、当日と翌日に多くの方が転倒し負傷したようだ。

 SNSでは雪に弱すぎる首都をディスるジョークが乱れ飛んだらしい。まあ、お愛想だろう。

 しかし、雪で立ち往生する車が続出、あちこちで事故が発生するなどし道路閉鎖が相次いだ。その日から翌日にかけて、首都の道路は機能しない箇所があちこちに発生していた。

 これはいただけなかった。

 積雪の予報は出ていたのだ。

「こんなに降るとは思わなかった。」

 責められるべきは先のような発言をする輩だろう。じゃあ、一体どんだけ降ると思っていたのだろうか。

 北国の人たちから冷やかされて恥ずかしいと思うべきは首都機能の弱さではない。自分たちの予測と見通し、対応力の無さだろう。

 降雪対策として、年に一度降るかどうかわからない雪のために首都圏のインフラを再構築するなんてあり得ない。

 この場合のリスク対策は「受容」だろう。受け入れるしかない。その上でマイナスの影響を最小限に抑える選択をするのだ。

 結論としては、雪が降るかもしれない日に「車を出す」行為がダメ。

 通勤は車ではなく電車、だ。

 物流はどうする?

 難しい判断になるがドライバーには事前に冬用タイヤに替えておいてもらうしかない。

 しかし、長距離トラックの運転者にはやってられない事とは思う。なんせ、積もるかどうか分からない訳だから。

 わざわざ、冬用タイヤに替えて雪が降らなかったらどうしてくれんじゃい、って事だ。

 まあ、せめて首都圏のドライバーだけは予報が出ているのだから事前の備えはしておくべきでしょ。

 なんかあったら「こんなことになるとは思わなかった。」とよく人は言うが、それは「何も考えてませんでした」と同じ。誉められた発言ではない。

 自分が予測したよりも結果の方が酷すぎた、なんて言い訳にはならない。

 

 さて、次に首都に雪が降ることに備えて次のことを認識しておこう。

 

・雪掻きをしていない道は避けたい。降った次の日は路面が凍結している。日陰を歩くときは要注意。

・雪道を歩く際は前の人の足跡、轍に沿って歩く。

・雪が降っても電車は動く。バスも動く(車重があるので少々の積雪は平気)。だがタクシーは微妙。大変なのは駅から自宅までのラスト1マイル。雪が積もる前に帰った方が安全。

・こちらではあまり種類がないとは思うが冬用のビジネスシューズは用意しておきたい。雪国の方々は通勤用のブーツを使っている。こっちでは少し恥ずかしいが…

・雪の日に傘は無意味。フード付きコートとニット帽。

スタッドレスタイヤを履いていないのであれば、そもそも車は使わない。新雪の上ではノーマルタイヤでもある程度は走れるが積雪5cm以上になればもう危険。進まない、止まらない、曲がらない。

・降った翌日はさらに危ない。アイスバーンを的確に判別し、やり過ごす技術・自信のない人は絶対に運転してはいけない。止まらない車ほど危険で怖いものはない。走る凶器。

・ABSを過信してはいけない。雪道を安定的に走行するには経験による”慣れ”しかない。

・北国の人がよく口にする格言。「雪道でブレーキを踏んではいけない。」

→踏まないと止まらない。ポンピングしろと言う意味。

・同じく「軒下でボ〜っとしていると命の危険がある」

→屋根から雪が落ちてきて怪我をするらしい。

・この間妻が言ってたこと。「パウダースノーなんて北海度だけ。東北では山の上だけだよ。地上はベタベタ。」(私にすればパサパサなのだが)

・以前妻が言っていたこと。「なんでウチの家の前は3日に1度しか除雪車がこないの?」(田舎の中のさらに田舎だから)

・一般的にFRよりもFFの方が雪に強いと言われている。私は箱根ターンパイクスカイラインが意図せずドリフト(回転)しているのを見たことがある。その後をカローラは平然と走って行った。FRとFFの違いが分からない人は、やはり雪の日に走ってはいけない。

・四駆であればノーマルタイヤでも平気と思っている人もいるがそれもほどほど。オールシーズンタイヤであればある程度は走れるが、やはり限界は早い。オールシーズンとスタッドレスでは比べものにならない。

・四駆といってもやはりFFとFRはある。パジェロランクルのようなベビーデューティーはFRであるがSUVの中にはFF派生のものもある。四駆であってもチェーンは駆動輪に巻かないとダメよ。

・当たり前だがチェーンは練習しないと巻けない。走行中に緩んだり外れたりすると酷い目にあう。

・この世で恐らく最も早く雪道を走るのは、雪国の農道を走る軽トラック。

・雪道を歩く美しい女性の中には雪女が混じっているので要注意。

・雪女は分厚いストッキングは履かないので見分けはつく。