オリオン座が沈む窓

azuyuz captain's log〜”ゆず”艦長の航海日誌

コロナの足跡

 先週末に久しぶりに帰阪した。

 さて、コロナのせいもあるが一体何年ぶりの帰省だったろうか。目的は母のご機嫌伺いだ。

 しばらく帰ってなかったので母の健康状態が気にはなっていた。

 嫁が「コロナが収まっている間に行ってきな!グズグズすんな!」とケツを叩くのでこうなった次第。

 朝、ゆっくりと自宅を出たので何やかんやで大阪着はお昼頃になった。

 昼食は当初、新大阪駅「熊メッセ」でお好み焼きを堪能しようと思っていたのであるが、いざ新大阪駅に着くと結構人出も多かったので行くのが億劫になった。

 私は新幹線ホームからそのままJR在来線に移動し梅田まで行くことにした。

 梅田の地下街に行くとトレビの広場に行くまでに「たこ八」がある。そこでも美味なお好み焼きは調達できる。

 狙ったお店に直行、購入。テイクアウトして実家で堪能することにした。

 阪神電車で10分ほど移動すると目的地に到着。

 そこでは駅ナカにコンビニがあるので母への餞別用のポチ袋を購入するつもりだった。

 ところが、駅に着いて改札を出でコンコースを見るといつものコンビニがない!

 百円ショップはいつも通り営業しているがコンビニと向かいにあったドラッグストアはシャッターを下ろしていた。

 「閉店したのか?」

 駅の外側は閑散としていた。

 私は足早に駅北側の通路を降りた。

 やはり…ない。いつもの店のシャッターが降りている。

 いつも実家に帰る際、ここでたこ焼きを買っていた。

 ここでずっと買っていた。

 

 実家までの道をゆっくりと歩いた。

 多くの商店がシャッターを下ろしている。

 コロナ前から(恐らく)地域全体の高齢化の波から閉店するところが見受けられたが、今回の帰省で決定的な結末を見せられた思いだ。

 あの焼肉屋も閉店している。

 焼き鳥屋も…。

 コロナがとどめを刺した。

 私の育った下町の商店街は事実上死滅していた…。

 

母「お好み焼き買ってきたん?」

ゆず「うん、梅田のたこ八で。ここのは結構いけるんよ」

母「この辺のお店、すっかり閉めてもうて。あんたの好きなもん、ここらでは買えへんようになってもうたねぇ」

ゆず「うん。ほんまに…」

 

 その夜、母と久しぶりに色んな話をした。

 就職してこの家を離れてからのこと、妻との生活のこと、会社とのかかわりのこと、これからどうするかのこと、(自分の)子供達・ひ孫たちのこと。

 それからお互いの終活について話をした。

 母からは「これまでよく頑張った」と褒めてもらいとても嬉しかった。

 多分、母との対面での会話はこれが最後かもしれない。

 母も高齢だし私は今より、より遠くへ行くかもしれないので…

 帰り道、今一度、自分の育った町の風景を見て少し淋しくなった。

 こんな閑散とした町ではなかった。40年前は。

 でも40年も前か…

 コロナは私たちから大切なものを奪っていった。

 

 新幹線から見た富士山がとても綺麗な2日間だった。

 

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