史上最大の引越し2
自宅の売買契約は順調に進み1月末には調印を終えた。
私たちは、秋田に建てる新居の設計と仮住まいの物件探しを並行して進めた。
自宅からの撤収は買い主さんと交渉し、引越しシーズンを避けて4月末としてもらった。
本来は速やかに引き渡しを行うべきであるが、仮住まいも決まっていないので、可能な限り時間的余裕を確保しておきたかったことから3ヶ月程度の猶予を頂くことにした。
秋田の仮住まいは、なかなか決まらなかった。
秋田の親戚の中には空き部屋があるので使っていいとの申し出をして下さる方もいた。
しかし、ペットは…NG。
親戚と同居するにしても賃貸物件を探すにしても、どうしても最後はイヌ・ネコの扱いがネックになってしまっていた。
あれやこれややっているうちに3月になったが、まだ仮住まいは決まらない。
妻は高校時代の複数の同級生にワンコとネコを別々に預かってもらう算段を始めた。
私は埼玉にペットOKの物件を探しそこに転居することにした。出来れば妻とともに秋田に行きたいが東京での仕事があるためそうもいかない。
私の受け持ちは少なくともネコちゃん2匹。そこで「剣心」と母親の「絢子」を連れて行くことにした。絢子は私のことが嫌いだが仕方がない(理由なくネコパンチを何回も受けている)。親子でセットだ。
しかし、埼玉の物件探しも難航。ネコ1匹はOKでも2匹となるとこれがなかなか物件が見つからない。
何とも理不尽で不便な世の中。
4月に入った。
1番のデカブツ家具である桐の和箪笥(嫁入り道具)とドレッサー、ピアノは、秋田の親戚宅で預かってもらうことになった。
4月第1週にこれらは0123と呼ばれる引越し業者により秋田に向け運び出された。
この段階でも妻とペットたちの行き先は決まっていない。
妻は私に「"ペット無し" でいいから先に住居を見つけて」と言う。「私たちは何とかするからとにかくあなたから。でなきゃ何も決まらないもの。」
私は埼玉某所の3DKのアパートを住居に決めた。一人で住むには十分な物件だ。
そして4月第2週に奇跡が起きる。
妻の友人から、実家が空いているので使っていいとの提案があった。
昨年の年末まで父親が住んでいたが、今は彼女が引き取って同居しているので空き家になっている。どうせ空き家だから使って良いとの事。
さらに実家には今後も住む予定がなく、かといって売りに出す気もないので、イヌ・ネコを連れてきてもらって構わない、と言って下さっているのだ。
望外の提案。
私たちの深刻な問題は一挙に解決した。
今でも信じられない事だ。
この1件で、妻の友人は同窓生の人たちから "神" と呼ばれているそうだ。
神友達。
4月15日、秋田のハウスメーカーとの打ち合わせのため車で秋田へ出発。今回妻は連れて行かない。行けない。自宅に残り引越し準備に専念する。
4月16日、現地でハウスメーカーと打ち合わせ。打ち合わせ終了後、妻の友人宅(空き家になっている実家)を見に行く。
外から見ただけであるが結構大きい。部屋数も多そうだ。これなら相当数の荷物を送っても大丈夫そうだ。
4月17日、藤沢に帰還。妻に友人宅の状況を報告。
引越しまであと1週間。0123会社からは120個のダンボールが届けられた。
4月25日、引越しを開始。トラックは埼玉便と秋田便の2台。
ワンコはとりあえずドッグトレーナーに預ける。
ネコは2階にネコ部屋を作りそこに収納。明後日、迎えに来るまでここで我慢してもらう。
4月26日、埼玉便の搬入開始。0123のお兄さんのテキパキとしたお仕事により2時間程度で完了。運び入れたダンボールは31個。あと台所にあった冷蔵庫は私が引き取った。
一人暮らしになる私に大きな冷蔵庫は必要ないが、それは妻も同じ事。妻は2階にあったやや小振りの冷蔵庫を秋田に持っていった。
新居が完成したらこれに替えて新しいものを購入するらしい。
今、私の部屋には単身者に似合わない立派な冷蔵庫が置いてある。
4月27日、早朝に藤沢の自宅にネコを迎えに行く。4匹は「私たちを閉じ込めてどこに行っていた」とニャーニャー文句を言っているが元気。良かった。
そのまま、車で秋田へ直行。あちこち寄ったりしたので到着は20時少し前だった。
4月28日、秋田便の搬入開始。ここでも0123スタッフの良い仕事により数時間で作業完了。運び込んだ荷物は93個口。
妻の友人の実家は豪邸だった。中庭付きの6K。
神。
5月1日、秋田から藤沢へGo。ワンコたちを迎えに行く。夕方、藤沢に到着。この日は相鉄フレッサインに宿泊。これで湘南台ともお別れ。
5月2日、朝一でドッグトレーナーさんからワンコを引き取りそのまま秋田へ向けてGo。ワンコたちに「お前たちは今日から秋田犬になるんだよ」と伝える。夜到着。
5月3日、妻とイヌ・ネコを秋田に残し、私は秋田新幹線で大宮を目指す。
先日の地震の影響で、こまち号は普段よりもゆっくりと走った。
昼前に自宅に到着。
ここで新たな一人生活を始める。
妻の元へ行くのは果たしていつになるのやら…。
この1ヶ月間、引越しに関連する移動距離は約3300Km。
私たちにとって、まさに史上最大の引越しであった。